「悪いか?」 「いや?でも、珍しい光景だったからね。」 肩をすくませた朔が、手に持っていたビール瓶をテーブルの上に置いた。 「兄貴、初めてじゃない?」 「何がだ?」 「女に執着するのが、だよ。」 くすりと笑う朔。 「…………あいつは、特別だ。」 俺は一気に酒をあおる。 あいつだけだ。 俺を強くも、 …………弱くもさせる存在は。 「莉茉は、俺の唯一無二の女なんだよ。」 あいつの代わりなんか、他にはいない。