寵愛の姫 Ⅲ【完】




「兄貴。」



莉茉との先の未来を思い浮かべていた俺を、朔の声が引き戻す。



「酒が無くなってるよ?」


「…あぁ。」



視線を落とせば、空っぽになったコップ。



「ほら、注いであげる。」



ビール瓶を片手に、俺に近寄る朔が隣に座る。



「悪いな、朔。」



コップを差し出す俺に、苦笑いを浮かべ朔が酒をゆっくりと継ぎ足す。




「兄貴、ずっと見すぎだよ。」


「見すぎ?」


「そう、莉茉さんの事。」




にやりと意地悪く笑う朔を半目で見つめた。