寵愛の姫 Ⅲ【完】



「っっ、あっ…。」



血に濡れたナイフを手に、唇を噛み締めてその場に佇む茉莉の姿があって。




「っ、い、たい…?」




どう、して?







恐る恐る痛む腰に触れれば、自分の手がべっとりと血に染まる。



「………、血?」



それで、理解した。





………………あぁ、刺されたのか。






血に染まった自分の手から、私の側に佇む茉莉へと視線を向ける。



「………茉莉…?」

「っっ、」



その瞬間。




唇を噛み締めた茉莉の目から、ぽろりと一粒、涙か零れ落ちるのを、どこか冷静に見ている私がいた。