寵愛の姫 Ⅲ【完】



「っっ、」



その証拠に、目の前の女が息を飲み、ゆっくりと一歩、足を後退させる。



「さ、朔くん?」



恐々、俺の名前を呼ぶ女に、虫酸が走った。




煩わしい。






愛想良くするのも、億劫で。



「あんだか、俺の何を知ってるの?」


「っっ、それは…。」



冷たく。





無表情を向ければ、恐怖心からか、そんな俺に馬鹿女は口を噤む。



「………ねぇ。」




そんな女に、目を細めた俺は、乾いた笑みを浮かべた。