寵愛の姫 Ⅲ【完】




「………ん、大丈夫。」


「…そうか…。」


「うん、暁、ありがとう。」




真っ直ぐ、心配げに私だけを見つめる暁に、ほんの少しだけ口角を上げ、笑みを返す。





これが、今の精一杯。



「莉茉?」


「…ん?」


「無理なら、このまま帰っても良いんだぞ?」


「………、」




労りの言葉に、心が揺らぐ。




瞳を揺らした私の髪を、暁が撫でた。




「無理をする必要はないんだからな?」

「……………そ、れは…。」



………………帰る。




この場所から。





全てのものから、目を背け、逃げ出す。







ーーーー何て、甘美な誘惑なんだろ。