「………ん、大丈夫。」
「…そうか…。」
「うん、暁、ありがとう。」
真っ直ぐ、心配げに私だけを見つめる暁に、ほんの少しだけ口角を上げ、笑みを返す。
これが、今の精一杯。
「莉茉?」
「…ん?」
「無理なら、このまま帰っても良いんだぞ?」
「………、」
労りの言葉に、心が揺らぐ。
瞳を揺らした私の髪を、暁が撫でた。
「無理をする必要はないんだからな?」
「……………そ、れは…。」
………………帰る。
この場所から。
全てのものから、目を背け、逃げ出す。
ーーーー何て、甘美な誘惑なんだろ。
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