寵愛の姫 Ⅲ【完】



「………………………はぁ。」


深々と、疲れの溜め息を吐き出した私は、今度こそ部屋から出る。






ーーーー最後まで、男の視線が背中に突き刺さったまま。



「っ、茉莉ちゃん…。」



遅れた私を待っていたのは、声を震わせ、顔を真っ青にした母親で。




どうやら、お父さんに追いていかれたらしい。





その姿は、見当たらなかった。



「………、」



そんな滑稽な母親の姿に、一瞬だけ顔をしかめそうになったけれど。





どうにか堪えた自分を、盛大に誉めて欲しいわ。





えぇ、心から、本気で。