狂気のお姫様

綺麗な顔して性格悪いぞこの男。

そしてやらかしたぞ、私。

せっかく無難な感じでいってたのに、本当はあんたたちのことフルネームで呼び捨てですよ、なんて印象が最悪ではないか。

よし、これからは心を入れ替え、ちゃんと心の中でも『羽賀さん』とお呼びしようではないか。


「えー…すみません」

謝るにこしたことはないので、素直に謝罪。


「まぁ別になんでもいいけどさ」

そう言う羽賀愁(もうフルネーム呼び)は、やっぱり何を考えているのか全然分からなくて、銀色の髪の毛がふわふわと揺れている。

ていうかこの男もいつの間にか私のこと呼び捨てにしてたし、もうおあいこってことでいいんじゃないか………と思うがそれは言えず、平たく謝るだけ。



そしてだ。何故この男は今私の隣を歩いているのかが甚だ疑問だ。

終わったよ。制裁終了現地解散だよ。ていうか見世物でもないよあれは。あまり人に見せて気持ちの良いものでもないよ。

こうなったらさっき疑問に思ったことでも聞こう。


「あのー、1個だけいいですか」

「ん?」

「鍵…閉めたはずなんですけど」


確かに教室の扉は閉めたはずだった。入って来れるところは前側の扉しかないのに、何故彼は入って来れたのか。

私はあの女に集中していたし、前々からこの男は気配が全く読めないので、どうやって入ったのか全然気づかなかったのだ。


「あー。あそこの鍵、壊れてるから。中からは開けられないけど外からは開けられる」

「…」

「…」

「えー…」


大〜〜誤算〜〜!!!!!!!!!!!!!

私としたことが、とんだ情報収集不足〜〜!!

いやでも待て。さすがに無理じゃないかそこまで考慮するのは。知らねぇよ。外から開くなんぞ知るわけないだろ。ていうか逆に何故この男が知ってるのかが疑問だ。古巣の差か。


「はぁ…」

と深いため息をつく。


「フッ…どんまい」

「…え」


え。

え。

え。

ちょっと待って。

ちょっと待って、今笑ったんだけど。

羽賀愁(やっぱりフルネーム呼び)が笑ったんだけど。

めちゃめちゃ可愛かったんだけど!!?!?!?

ていうか笑うの!?それはちゃんと申告してくれないと!!!さすがにこの綺麗な顔で笑われたら心臓丸ごと持ってかれるわ!さすがに対応不可能だわ!!



声に出しそうになるのを必死に堪え、とりあえず頑張って平静を装う。


「口に出てたけど」

私〜〜〜〜〜〜!?!?!?


羽賀愁は若干引いた顔をして私から距離をとる。待てよ。なんでそんな引いた顔してんだよ。



「俺、襲われる?」

「いやいやいやいやいやなんでですか」

「こわ。気をつけよ」

「ちょ、距離とりすぎでしょ」


あんたなんか襲ったら返り討ちにされるわ。