狂気のお姫様

「…は?」

「ブッ…ククッ…。めっちゃ飛んだウケる」


やっぱり女子って軽いなぁ。あんまり女子を蹴り上げることないから、力加減がバカになっちゃうよ。


「ゲホッゲホッ…」

「ごめんごめん。加減したつもりだったんだけどー」


机や椅子に突っ込んだリカは、頭から血が出ているらしい、痛みに顔を歪めている。


「は?…な、なに、あんた」

レイナはというと、まさか真隣で人が吹っ飛ぶなんて予想してなかったのか、目を見開いて動揺を隠しきれていない様子。


「なにって…普通の女子高生だけど」

それ以外になんという答えがあるのか。模範があるなら言ってほしいところだ。

首をコテンと傾げてニンマリ笑うと、私の異常さに後ずさりをはじめるレイナ。


「ちが、!あたしたちじゃない!証拠もないじゃない!」

「必要ある?」

「は、はぁ?証拠がないのでなんであたしたちだって決めつけるわけ!!?」

「え、だってあんたたちだもん」

「意味分かんない!頭おかしいんじゃないの!?」

「さっきからギャンギャン吠えるなぁもう」

「ヴッ」


レイナの首を片手で掴み、持ち上げる。

「ヴヴッ、や…め…」

つま先立ちで、今にも浮きそうな体を必死で支えながら私の手を離そうとするが到底かなわず、どんどん顔が赤くなっていく。


「は…な…………」

「え、なにー?ハッキリ喋ってくんない?」

「………ッ」


息ができなくて苦しいのか、目を剥き出しながら藻掻いている。


「レ…イナ!」

「わ」


すると、親友の大ピンチを救おうと、さっきまで机と椅子に埋もれていたリカが、落ちていた箒を持って私に振り回してきた。

「カハッ!!!ゲホッ!ゲホッ!!」

思わずレイナから手を離し、その拍子にレイナは床に落ちる。涙目のまま、新鮮な空気を目一杯吸い込む姿は滑稽だ。



「危ないじゃん」

「うるさい!!」

「あれ、手震えてるよ?どうしたの?」


武器を持ったところで、私が怯むはずなんてない。だが、私が少しでも焦ると思ったらしいリカは、あまりの私の変わらなさに動揺している。


「ていうか、あんたたち幸せだよ」

「は、はあ?」


いきなり『幸せ』だと言った私に怪訝顔の2人。

「忘れたの?佐々木夕を殺そうとしたんだよ?」

そう言うと、サッと顔が青くなった。