狂気のお姫様

あの日は結局、動揺している小田とパフェを食べて帰った。

ていうか、小田を糖分で落ち着かせるためにカフェに行ったと言っても過言ではない。

動揺しすぎて道中『なんだあれは!東堂!死ぬとこだった!』とぎゃーぎゃー言っていたが、ウザかったのでフル無視した。ペロッとデラックスパフェをたいらげていたので、心配は必要ないだろう。なんせアホだからな小田は。



天はというと、あれから会っていない。陽ちゃんは相変わらずウチに来るので会ってはいるが、話を聞いたところによると、佐々木夕がプリプリ怒っている以外、別段何もしていないみたい。そりゃそうか。私の客だもんな。

それはそれとして、羽賀愁の反射神経の良さについて陽ちゃんに聞いたのだが『あいつは天才だからなぁ』としか返って来なかった。別に何か隠してるわけでもないみたいだからいいんだけどさ、まさかジローさんと同じ職じゃないよな、とちょっとだけ思ってしまったのだ。怖いし。



そしてだ。本題はこれから。

[佐々木さんに当たってたらどうするつもりだったのよ!]

[まさか顔出すなんて思わなかったじゃん!]

[運良く避けてくれたから良かったけど…]

[でもあたしたちだってバレてないって!!]

[そう、だね。そうだよね…]

[次どうするか考えないと]

[ほんと、東堂律…ムカつく…]

ぜーんぶ、聞こえてるんだよなぁ。



授業中、小田の影に隠れながら、イヤホンから流れる声に「はぁーー…」と深いため息をつく。

やっぱりなぁ。こいつらだよなぁ。そろそろかなとは思ってたし。

ちなみにだが、声だけでなく映像もばっちり。分かってやってるんじゃないかと思うくらい鮮明にうつっているので拍手を贈りたいくらいだ。

ていうかこれを佐々木夕に見せたら自分で殺りに行くんじゃないかと思うが、これは私の獲物なので奴にあげることはない。残念。


「だからのぉ…ここは…」

死にかけのおじいちゃん先生の子守唄を聴きながらカクカク寝ている小田を今日もつついて起こしながらチラリと犯人を見ると、素知らぬ顔で授業を受けている。



バカだなぁ。なんのために私が学校散策してると思ってんだよ。

どこから狙われてるか分からないのに、対策してないとでも思ったのか。

まぁ、奴らは、まさか自分たちがやったことがバレてるとは思っていないだろう。だからと言って種明かしをするつもりはないが。


さてどうしようか。

いろいろと試したいものはあるのだが、何しろ用意が間に合っていない。今取り寄せ中のものもあるのだ。仕方ない。今回は古典的な方法でいくか。

まずはどうやってあいつらを呼び出すかだな。


そんなことを考えているうちに授業は終わってて、小田が伸びをしている。


「寝すぎ」

「え、私寝てた?」

「え、寝てないと思ってた?」

「授業受けてたよ」

「は?」

「マグロの実験が中止になった話でしょ?」

「何の話だよ。夢見てんじゃねぇか」

「なんだって…」

「しかも何の教科よそれ。生物なの化学なの日本史なの」

「は、さっきの時間物理だっただろ?」

「世界史だわ」

なんでこいつはどこまでもアホなんだ。

「夢だったなんて…。せっかく学んだのに無駄じゃねぇか」

「それ学んだうちに入るのね」


いかんいかん、こんなアホな話をしている場合ではないのだバカめ。こいつはほんと能天気だな。