狂気のお姫様

「おー、何してんだ」

「小田ちゃんがシャーペン落として見つけてオメデトーってなってたとこ!」

「夕お前ちゃんと接続詞とかつけような」

「はん?おう、分かった」

「分かってねぇなそれ」


1番最初に陽ちゃんが頭を出し、


「律ちゃん小田ちゃん今日も可愛いねー」

「あ、どうもー」


2番目に四ツ谷鳴が顔を出し、


「…」


3番目に羽賀愁が一瞬だけ顔を出して引っ込んだ。


「勢揃いだ…もう上なんて向けねぇ」

「天が見下ろしてくるのなんかシャレっぽいね」

「なんでそんな平気なんだ東堂」

「開き直ったから」

「頭狂ってんじゃないの」


失礼な奴だなこいつは。

まぁ確かに、小田にとったら苦痛かもしれない。

それにしてももれなく全員顔がよろしいことで。

他の人が見れば発狂ものだろうな、と心の中で思う。まぁ、私にとってはその中に陽ちゃんがいるのがまた面白いのだが。


「2人とももう帰るのー?」

「はいー、今日は寄るところあるのでー」


四ツ谷鳴の問いかけにサラッと返すと、

「そっかー、じゃあまたねー」

と佐々木夕がブンブン手を振る。

小田は心底『早く行け』という顔をしながらペコリと会釈。私も「はーいまたー」と適当に返事をすると、長谷川蓮も小さく手を振っていた。



すんなり顔を引っ込めた天に、深いため息をつく小田。

「はー、これ5人全員と直面してたら死んでたわ。1階分離れてたからまだ圧は少なかったけど」

2階も1階も変わんないでしょ。

「大丈夫でしょ」

「あんたはな」


せっかくシャーペンが見つかって、さっきまで歓喜の小田だったのに、今は意気消沈。忙しい奴だな。

「帰るか」

「もう今日はデラックスパフェ食べてやろう」

「おい金欠」

「構ってられねぇ」

だったらもう1本くらいシャーペン買えよ、と誰もが思ったであろうが、敢えてそれは言わないでやろう。

そう思いながら、一旦教室に戻ろうとした時である。


「あ!そういえばさー」

と、佐々木夕が再び顔を出し、小田と『まだなんかあんのかよ』と上を向いた瞬間だった。




「!!!!」

佐々木夕の頭越しに見える物に、サッと全身の血の気が引き、ひゅっと喉が鳴ったのが分かった。

咄嗟に、

「上!!!!!危ない!!!!」


と、叫んだ瞬間、

「ぐぇっ」

佐々木夕は誰かに引っ張られたのか、頭を引っ込めた。

それに安心したのも束の間、瞬時に自分の隣にいる驚き顔の小田をグイッと引っ張る。

「うわっ」


ガッシャ------ンッ!!!!


途轍もなく大きな音で地面に叩きつけられ、粉砕された物───それは、



───植木鉢。