狂気のお姫様



「小田、今更気配消したところで完全に見えてるから」

「チッ」


コソッと忠告してあげると、小さく舌打ちをした小田は諦めたように首だけをグリンと上に向けた。

「どうもー…」

「諦めなよー、シャーペンくらいー」

「1本しか持ってないんでー」

「勉強する気ないじゃん」


私もさっきそれ言った。

「は、1本でも持ってきてんだからやる気あるに決まってんだろ」

「もっと大きな声で言えよ」

「それは無理」

「なんか言ったー?」

「なんも言ってないですぅ」


こいつ…、2人が2階にいてあまり声が聞こえないからって好き勝手言ってやがる…。


「くそぅ、こうなったら意地でも見つけてやる…!」

何故かヤケクソで草むらを掻き分けだした小田に若干引きつつ、また上を向く。


「そちらは何やってんですかー」

「今から帰ろうとしてたとこー」

「へぇー」

「ちょっとー、興味ないでしょー」

バレたか。

だって小田がこんな状態なので暇なんだもん。


「もうちょっとで愁たちも来るよー」

「わー」

「ちょっと蓮ちゃん!あの子棒読みすぎて全然興味ない!」

「おう」

「蓮ちゃん、俺が欲しいのは返事じゃなくて慰めだよ?」

「おう」


コントでもしてんのかあんたら。


「変な奴だな、小田」

あんたも充分変だがな。

「あら、蓮ちゃん…」

「なんだ」

「もしかして…」

何かボソボソ喋ってるが、全然聞こえない。

「帰らないんですかー」

さっさと帰ればいいのに、と思いつつまた声をかける。

「あ、もうちょっと見るー」

「おい小田、見世物にされてんぞ」

「え、不本意」


草むら掻き分ける女子高生なんて見たことないもんな。そりゃ見世物にもされるわ。シャーペン1本くらいで。

「もう見つかんないってー」

「絶対ありますからー」

総じて暇だな私たち、と思いながら「ふわぁ…」と欠伸をしていると、いきなり「あーー!!」と小田の叫声が耳に響いた。

「なんだよびっくりした」

「あった!!!あったぞ東堂!!!」

葉っぱをいっぱいつけ、すこぶる満足気な顔をして振り向いた小田に、まあまあ冷たい顔で「オメデトー」と拍手を贈ると、上からもパチパチと手を叩く音が聞こえてきた。

「おめでと小田ちゃーん」

「あ、ありがとうございますー」

「良かったな」

「あ、どうもー」

シャーペン見つけたくらいでそんなテンション上がるかよ。


「さ、帰るぞ東堂。全員揃う前に」

はしゃいでると思ったらすぐさま帰ろうとする小田に首を傾げる。

「は?全員?」

しかし、小田が言ってることを理解するよりも、その『全員』が揃う方が早かった。


「あ、愁ちゃんたち来たー」


なるほど。『全員』揃ってしまった。

あ、小田白目剥いた。