狂気のお姫様

「何やってんだよもう」

「何やってんだろもう」

「全然ないし」

「見つける気ないだろ東堂」

「ない」

「薄情」

「だって私のじゃないもん」

「どこまでも薄情。クソみたいな性格してんな」

「それ小田」

「は、私人情溢れまくってるから。100%人情人間だから。東堂が落し物したら見つかるまで最前線で探す」

「はい嘘」


100%薄情人間の間違いだろ。

壁にもたれながら、必死で草むらを掻き分けている小田をぼーっと見つめる。

アホの小田は、なんせアホなので、筆箱を閉め忘れたまま廊下を歩いており、見事に躓いた。その拍子に筆箱の中身は窓の外に散乱。お気に入りのシャーペンだけが見つからないとのこと。


探してたんだよ私も。最初は。

だけども、

「飽きた」

もう見つからないんだからいいじゃないか。

「探せよ」

「新しいの買えよ」

「は、無理。今月金欠」

「いつも金欠じゃん」

「ねり梅買いすぎたか…」

「いやねり梅そんな高くないでしょ。何個買ったんだよ」

「割合的にねり梅圧勝説」

「きっしょ」


100%ねり梅人間じゃねぇか。


「ないーーーー」

ガクーッと地面に手をつく小田がアホすぎて笑ってしまう。


「諦めて帰ろーよ」

「諦めない」

「じゃあね」

「待て」

「今日甘い物食べに行くんでしょ」

「それは行くしそれのせいでお金ないけど、シャーペンは諦められない」

「シャーペンぐらいもう1本あるでしょ」

「1本しか持ってきてない」

「勉強する気皆無かよ」


もう彼氏にでも買ってもらえよ。シャーペンの1本や2本買ってくれるだろ、と思いつつ、ため息をつく。

私は完全に探す気はなく、チンケな格好をしている小田の写真をパシャリと撮りながらケラケラ笑うのみ。


すると、ふと上から

「あれ、律小田コンビじゃね」

と、聞き覚えのある声が。


徐にに上を向くと、2階の窓からブラウンと黒の頭が2つぴょこっと出ている。

なんだか久しぶりに会ったような気がするな。


「律、と小田」

「やっぱそうだ」

「あ、こんにちはー」


上を向いたまま小さく会釈をする。


「何やってんのー?」

「いやー、小田がシャーペン落としましてー」

「小田ちゃんすごい格好してるけどー」


上を向いていた顔を小田の方に戻すと、四つん這いのまま見事に固まっている。