狂気のお姫様

「さっちゃん!またジローさんに虐められた!!」

「おー、律おはよう」

「おはよう!!!!もう13時だけどね!!虐められた!!」

「元気だなー、子供は」

「子供だからね!!!!虐められた!!!」

「制服どうだった」

「最高ありがとう!!!虐められた!!」

「はいはいよしよし」


縁側で座って日向ぼっこしてるイケオジの膝に蹲って泣き真似をする。

少しはだけた着物でゆらゆら紫煙を揺らしているイケオジは、私が泣きつくなり少し垂れた目尻を下げた。無造作な黒髪が風に揺れている。


「なんでバレんのさ」

「ジローのやつ鋭いからなぁ」

「第六感冴え渡りすぎだろ」



お察しの人もいるかもしれないが、ジローさんとは、私のお父さんの弟、つまり私の叔父だ。

そしてさっちゃんこと佐助のおじ様はジローさんの側近。一応部下なのだが、41歳とジローさんよりかは年上で、古株ということもあり途轍もなく自由人。ジローさんのことも『ジロー』と呼び捨てにしている。


「まあまあ、久しぶりの休みだ。話してやれよ」

「話が全部説教なんだよ」

「愛だ愛」

「たまに頭殴ってくんだよ」

「愛だ愛」

「ジローさん私のこと好きすぎなんだよな」

「それは間違いない」


確かに最近のジローさんは忙しそうだった。全然家にいなかったし。だからやりたい放題してもバレないと思ってたのに…くそぅ…。


ちなみに、ジローさんは何の仕事をしてるのかというと、分かりやすい表現だとあれだ。ヤのつくやつ。

うちの自由奔放なパピーが『面倒なのでジローが継いで』と逃げたため、ジローさんが組長さんをやっている。

おじいちゃんはというと、本当は組長のはずなんだけど、『もう隠居して一日中日向ぼっことかしたい』とこれまた自由極まりないことを言い放ち、ジローさんにその座を明け渡したらしい。

大丈夫なのかこの組は…、と思うが、本当にあのおじいちゃんの息子で、うちのお父さんの弟かと思うくらいジローさんはしっかりしてて、多分そういうしっかりした部分を2人から全部吸い取ったのだと思うので、きっと大丈夫なんだろう。

そしてそして、私はというと、両親が海外でお仕事中なのでジローさんちに居候している。未成年者だもの。一人暮しなんてさせてもらえないよね。餓死する自信しかないもん。

組員さんたちはここで住んでるけど、私は離れで暮らしているのであんまり会わない。

ただ、会ったときは可愛がってくれるのでみんな好きだ。顔面イカついけど。

その中でもさっちゃんは別格。小さい頃から甘やかし、可愛がってくれたので死ぬほど懐いてる。ジローさんとパピーはそれが気にいらないらしく、私がさっちゃんにくっついていたらすぐ怒る。親バカだ。


「あ、また佐助さんにくっついてんのかよ」

「うるさい邪魔するな」

「よっこいせっと」

「座るな」

「よう、陽介」

「お疲れ様っす」


私のことは無視してさっちゃんの隣に座り込む陽ちゃん。さっき全然味方してくれなかったので、こいつは嫌いだ。