「その子がね、何故か分からないんだけど私の悪口言ってるのが聞こえて…」

「うそー!あの子そんな子だったんだ…」

「杏奈気にしないのー!絶対僻みだから!」

「私は何もしてないんだけど…」

「そういう奴いるよねー」

「杏奈可哀想…、私たちがいるから大丈夫!」


まだやってたんだそれ。

相変わらず私の悪い噂と、鹿島杏奈の悲劇のヒロインぶりは留まることを知らず、今日も今日とて鹿島信者という名の虫どもが彼女の周りでブンブン飛び回っている。

話を聞く限り、また誰か女の子が鹿島杏奈の餌食になったらしい。可哀想にね。


「子役並だよな」

「なにが」

「泣きの演技」

「あんな打算的な子役嫌だわ」

「間違いない」

お昼、購買に行こうと小田と歩いていたら、たまたま鹿島杏奈たちが廊下で話していたのだ。相変わらずのハニーピンクのふわふわな髪の毛とうるうるな瞳。中身と大違いなんだけど。それはまぁいいとして、まあまあ離れてるのに声が聞こえるって、周りに聞かせようとしてるとしか思えない。


「最近天とどうなのかな」

「知らん。陽ちゃんからは何も聞いてないわ」

「聞いてないってことは何もないってことじゃない?」

「多分ね。まぁ、何かあったら陽ちゃんあたりがギャンギャン吠えてると思うし」

「ギャンギャンって…笑」

「佐々木夕も吠えてそう」

「佐々木さんは…」

「「キャンキャンだわ」」


思わず小田とハモってしまい、吹き出してしまう。だって佐々木夕は絶対小型犬だもん。女に対しての毒の吐き方がなかなかえげつなかったが、童顔なので私からしたらどうしても可愛く見えてしまう。


「ていうか邪魔じゃないあの集団」

「確かに」


ただでさえお昼休みで、購買に近づくにつれ人がごった返しているのに、集団で廊下にたまらないでほしい。迷惑だ。


ということで、

「ごめん、邪魔なんだけど通してもらっていい」

と言う羽目になるよね。


「は?」

「うわ、東堂律じゃん」

はーい、その東堂律ですよー。東堂律が通りますよー。

「何様?邪魔って感じ悪いんだけど」

まぁ立ちはだかってくるよね。