狂気のお姫様

プルルルルル…

「陽ちゃーん」

《律ちゃん!電話切ったでしょ!バカ!》

お呼びでない。

「陽ちゃーん」

《え、無視した!とうとう律ちゃんが無視した!!》

「あ、すいませーん。電話とられてたんですよ。しょうがない。あいつらのせいです。うん、しょうがない」

《嘘っぽ!!!!!!!!!》

「そ、そんなわけないじゃないですか」


喧嘩したあとって、なんか気が緩んじゃうんだよな。危ない危ない。天相手に無視するところだった。


《終わっちゃったの!?》

「終わっちゃいましたね」

《えー!見たかったー》

「また別の機会に」

《おじさんを躱す頭の良いキャバ嬢のセリフ》

よく分かってんじゃねぇか。



《夕お前携帯とってんじゃねぇよ》

《げ、陽介、ザザザザッぶはは…ザザッは!》

《ザザッあっぶね!ザザザッガタッ》

うるさ。

雑音が入り、思わず顔を顰める。何やってんだこいつらは。電話口であたふたやってんじゃないよ。絶対携帯落としただろ。


《ザザッおー、律、片付いたのか》

「うん、だけどこの格好じゃ帰れないからお迎え来て」

《はぁ?》

「何故か血塗れになっちゃった」

《はぁ???》

「早くー。乾いてカピカピになっちゃうー」

《お前、まさかやりすぎたんじゃなかろうな》

「何をもってしてやりすぎたというのか」

《相手の状況や如何に》

「みんな仲良く寝てる」

《行くの怖いんだけど》

「なんでよ。まあまあの地獄絵図だけど大丈夫だよ」

《それ大丈夫じゃないのよ》

「大丈夫だってー。ていうか今どこなの」

《まだ学校》

「車でお迎え来て」

《アホ言うな運転できるか》

「普通の高校生みたいなこと言わないでよ」

《普通の高校生だからな》

「まぁそんなことはどうでもいいから迎え来て」

《ジローさん手配しろ》

「ぶち怒られる」

《怒られろ》

「薄情!このままじゃ血塗れのままここから動けない。風邪ひく。血で風邪ひく」

《んなわけあるか。聞いたことねぇわ》

「あのねー、場所はねー」

《おっとパシる気満々》

「いや、ここどこよ」

《絶対それ俺知らん》

「現在位置送ってあげる」

《え、なんで上から?》


しょうがないな、面倒だけど送ってやるか、と携帯をスピーカーにしていじっていると、奥の方で《愁ちゃん明日カレーパン食べ比べしようぜー》とアホの声が聞こえる。あ、アホとか言っちゃダメだな先輩だもんなうんうん。

そして羽賀愁もまだいたのかよ。ていうかやっぱりカレーパンが毛ほども似合わん。


「送った。10秒で支度しな」

《無茶言う。シー〇もびっくり》

よく分かったな。ラピ〇タだって。

《ちなみにだけど、バイクだから》

「風邪ひく」

《あ、でもバイク汚れるの普通に嫌なんだけど》

「あとで拭いてあげるよ」

《はい絶対嘘ー》

《え、いつまで話してんの?》

珍しく佐々木夕がまともに突っ込んでくる。いやほんと、いつまで話してんの。私もさっきからずっと思ってた。絶対来ないじゃん。嫌だよこんな血塗れのまま1人で帰るなんて。職質案件じゃん。