狂気のお姫様

ブチッ

うるさすぎてとりあえず電話を切った。

何普通に見学しようと思ってんだよコイツは。来たところでうるさいことは分かりきっている。無視だ無視。何故切ったんだと言われても不慮の事故ということにしておこう。こいつらのせいだ。そうだ。


プルルルルルル

「…」

ブチッ


私は何も見てない。

陽ちゃんから、いや、絶対佐々木夕からだが、電話がかかってきたなんて知らない。携帯をとられたという設定でいこう。そうしよう。


いきなり電話を切ったことに戸惑いを隠せないらしい目の前の彼ら。そりゃそうだ。さっきは天を呼ぼうとか言ってたんだもの。

まぁ、まずは自分たちのことを心配しようね。


「さて」

また電話がかかってきたら面倒だからな、と一応音も切り、彼らに向き直る。


「どうしようね」

ニタリと笑うと、女の1人が口を開いた。


「あ、あたしたちの勘違いだったから…!まさか如月さんと知り合いだとか知らなくて…!」


あらら。これは命乞いかしら。意味のないことをするもんだなぁ。

「でも、さっきあなた陽ちゃんたちが私を邪魔だと思ってるってハッキリ言ってたじゃん。すごいねー、心の中が読めるんだねー」

「だから…」

「今更間違いでした、じゃ済まされないに決まってるだろ」


表情を無にして淡々とそう言うと、女は黙るしかない。

今この状況でどうするのが最善か、ちゃんとその弱い頭で考えようよ。逃げるなんて1番面白くない答えだ。私は最初からやる気満々だし、お前らもそうだったではないか。

男まで出してきたんだ。もう戻れない。なのに今更引き下がろうとするのか?



「もう…殺っちゃおうよ」

そう来なくちゃ。

『赤信号、みんなで渡れば怖くない』の原理だろうか。1人がそう言うと、他の女も、後ろの男たちも、どことなくやる気になっている。


「天に…言えなくすればいいんだよ」


1人がボソッとそう言うと、男たちは鉄パイプを構えた。

天に言えなく…ねぇ。何をするつもりなのか。

まぁ、何をするかなんてどうでもいいんだけど。


「相手は女1人だよ。ボコボコにやっちゃえばあたしたちだってバレないよ」

「そうだよな、女相手に何ビビッてんのって」


あーあ。力の差が分からないって可哀想だね。




「悪く思うなよ東堂さーん」

「ちょっと生意気すぎたな?」

「痛い思いする前に謝ってくれてもいいんだぜ?」


下品な笑みを浮かべ、向かってくる男たちに、


「…グフッ」

「痛い思いするのはお前らだ」


抑えきれない狂気をさらけ出す。