狂気のお姫様


さてそろそろ殺りますか、と通話を切ろうとした時、

《え!律ちゃん喧嘩中ー?見たーい!》


………なんであんたがいるんだよ。

突然聞こえてきた声に、ため息をつく。


《愁ちゃーん!…あっまたカレーパン食ってんのかよ。どんだけカレーパン好きなんだよ》

おいおい待て待て。あの銀髪もいるのかよ。


《うるさいな。なんだよ》

《律ちゃん見に行こうぜー》

《どっからそういう話になった》

《今喧嘩中だってさー》

《へぇ》

《愁ちゃんの大好きな律ちゃんだよ?》

《おい変なこと言うなカレーパン出るとこだった》

《律ちゃん今どこー?》

《は?電話繋がってんの?夕お前バカか》



うん、律儀にお互いの名前を呼んでくれてありがとう。
そのお陰で、電話の向こうにいるのが陽ちゃんだけでなく、佐々木夕と羽賀愁もだということが彼らにも伝わったようだ。

それにしても羽賀愁、陽ちゃんたちと喋ってると少しだけ人間味があるように感じるのは気のせいか?カレーパンが毛ほども似合わないんだけど。そして『大好きな』というフレーズはスルーしよう。佐々木夕に遊ばれて可哀想に。



もう立ち尽くすしかない目の前の男女に、首を傾げる。

「今から来るみたいなんだけど、いいよね?」

《えー?律ちゃんなにー?》

うるさいな。


「あたしたちそんなつもりじゃ…」

と明らかにビビっている女。

「え、でも鉄パイプとか持ってるじゃん。それにさっき『やっちゃってよ』とか言ってたし。そんなつもりじゃないならどんなつもり?」

《そーだそーだー!》

うるさいな。


「喧嘩売ってきたのはそっちでしょ?買い戻すことなんてできないよ?」

狂気はもうそこまで来ていて、ニタリと笑うと、さっきまでと違うその雰囲気に彼らはガタガタと震えるだけ。


《殺っちゃえ律ちゃーん!あ、その前に場所ー!》


まじでうるさいなあの童顔!!!!!!!!!