狂気のお姫様


男は5人。3人はこの前体育館で待ち伏せしてた奴ら。だがあとの2人は制服が違うので他校の生徒だろう。

あーあ、鉄パイプなんか持っちゃって。人でも殺す気なのかしら。


じっと黙っていると、怖がっていると思ったのだろう。

「ごめんな〜、俺らは東堂さんに恨みとかはないんだけどさ?」

眉を下げて話しかけてくるが、悪いと思っているなら呼び出したりしないだろバカが。

「ほんとにこの子ヤっちゃっていいの?やべー」

「久しぶりに燃えそう」


ヤる?殺られるの間違いじゃなくて?
考えることが低レベルすぎて嫌になる。


「はやくやっちゃっていいよ」

とクスクス笑っている女たちに、

「どういうこと?」

と一応聞いてみる。

鹿島杏奈絡みか、噂を信じた天信者かは分かっていないからな。敵の目的を知るのがまず最優先だ。


「は?天の皆様があんたを邪魔だと思ってんのよ」


あー、そっちか。天信者ね。はいはい。
ただの女の妬みに男を出すかと思うが、頭が悪いのだからしょうがない。大目に見てやろう。

「天がそう言ったの?」

陽ちゃんが私の知り合いという時点でそれはないが、そんなことこいつらは知らないもんな。


「別に言わなくたって分かるの。あんたみたいなのが周りでチョロチョロしてたら天の皆様も迷惑なのよ」

エスパーじゃん。

すごいすごい、人の気持ちが読めるんだね。思わず拍手を送りたくなったが、それはやめておこう。

ていうか私あの人たちの周りをチョロチョロとかしてない。こないだ佐々木夕が私の周りをチョロチョロしてたぐらいで、そんなに話すこともないし、屋上にも近づいてないから会うことも少ないのに。

こいつらは何を見て私がチョロチョロしてると思ったのだろうね。


「分かった。じゃあ明日陽ちゃんに聞いてみる」

「は?」

怪訝そうな顔をしている女たちに、首を傾げて少し笑う。


「陽ちゃん。あ、如月陽介ね。幼馴染なの。昔から一緒でね、今日も朝ウチに来てたんだよね。陽ちゃんたちが私を邪魔って思ってるってことでしょ?でも本人に聞いたわけじゃないから、明日聞いてみるね」

「…え?」

「幼馴染…?」


まさか陽ちゃんともともと知り合いだとは思っていなかったのだろうね。

「あ、なんなら今から電話してみようか。呼び出そうよ」


そう言った私に、今度は男たちが青ざめる番だ。

あぁ、滑稽、滑稽。