狂気のお姫様

追ってきてるな。

そう思ってから15分。

もはや学校を出たぐらいから気づいていたが…、尾行をするのが下手にも程があると思う。ていうか尾行を大人数でするならばそれはもう尾行ではない。

撒くこともできるがそれはしない。潰せるときに潰しておかないと、また新しい敵がでてきたら面倒だからな。



それにしてもいつ話しかけてくるんだろう。

家がバレるのは嫌だから、わざわざ全然家とは関係ない道を歩いているんだが…。


え、もしかして私が話しかけるべき?待ってたりする?まさか告白?いや、そんなわけないよな。

なんて思ってたら、

「東堂律」

やっと来たか〜。


遅いよ〜。ドッキリに気づいてたけど、気づいたことがバレないように過ごす芸能人の気分だった。

くるりと後ろを向くと、女が3人。

案の定こないだ体育館で待ち伏せしていたギャルが2人と、私を呼び出した奴が1人。そろそろ来ると思ってたんだよな。


「なに」

湧き上がる狂気を抑えつつ、静かに答える。


「ちょっと来てくんない?」

「誰?なんで?」

一応すっとぼけてみるものの、女たちは有無を言わさず「いいから来い!!」と腕を掴んできた。

『ちょっと来てくんない?』って言ったじゃん。私に伺いをたててきたから理由を聞いたのに、日本語が通じない猿だなまったく。それなら最初から『来い』とだけ言えばいいのに。だって行くし。普通に着いていく気満々だったし。


グイッと腕を引かれる。

痛いなぁもう。そんなガッシリ掴まなくても逃げませんよ〜と思いながらも黙って着いていく。


「こないだ体育の先生が呼んでるって言ってた人だ」
「帰りたかったから帰っちゃった〜たはは〜」
「そういえば体育の先生からあのあとなんにも言われなかったんだけど良かったのかな〜」
「あれ〜聞いてる〜?」


すっとぼけたフリをして矢継ぎ早に質問するも、ガン無視。

もはや他の女2人と目を合わせて『コイツやばくね?』と会話をしている。ひどい話だ。空気感が悪くならないように話しかけてやってんのにさ。



しばらく着いていくと、人気の少ない路地裏に着いた。

廃墟っぽいビルとビルの間で、いかにもそういうことが行われそうな場所。

そして、

「え、めっちゃ可愛いじゃーん」

と、いかにも頭悪そうな男たちがニヤニヤ不細工な顔で出てきた。


「ちょっとコイツまじで頭おかしいんだけど」

と言いながら、私を男たちの前にペイッと押し出す女たちもニヤニヤ顔。

みんな同じ顔してて普通に気持ち悪いんだけど。