「あ、の…」
「ていうか、話しかけない方がいいって…なにお前ら、俺に命令してんの?」
「そ、そういうわけでは!」
まぁそうなるよな。
お前らは鹿島杏奈ではないのだ。例え本当に鹿島杏奈が天と仲が良かったとしても、自分たちも仲良くなったと錯覚するのはバカだ。
「あ、あの、あたしたちは」
「うるせぇっつってんだろブス。黙れゴミ」
そう吐き捨てられ、女の尊厳をゼロにされたギャルたちは恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。
「え、いつまでいんの?邪魔なんだけど」
そして冷たいオーラでそう言い放った佐々木夕に、今度は顔を青くしながら逃げて行った。
「で、ねり梅ってどういうこと」
「「それはもういいです」」
違うのよ。あんなに暴言吐いてからねり梅のこと聞くのはもうなんかいろいろ違うのよ。
「はぁ、クソビッチうぜ」
可愛い顔からの暴言は破壊力がすごいな。
窓から顔を出して話してるだけとは言え、さすがに怖かったらしい。教室内もどこか凍りついている感じがする。
しかしそれを打破するのも天。
ガラガラッ
バンッ
いきなりすごい音がしたかと思うと、教室の後ろの扉が勢いよく開いていて、黒髪のデカい男が立っていた。
「来た…」
その登場に、私と小田はため息をつくしかない。
「見つけたぞ夕、テメェ」
「げっ、蓮ちゃーん、やっほー」
途轍もなく物騒な顔をしている長谷川蓮に、クラスメイトは失神するんじゃないかと思うくらいビビリ倒しているが、佐々木夕はニコニコ笑ってるだけ。
可愛い顔してるなほんと。
じゃなくてだな、
「長谷川さん相当怒ってるんじゃないですかアレ」
「そんなアイス食ったぐらいで怒るなよなー」
「今までの積み重ねでしょ絶対」
「通算36回は食べてるからねぇ」
「それは食べすぎ」
普通に突っ込んじゃったじゃんもう。何してんだよこの人はほんと。
「あ、やば、来るわ」
そう言った佐々木夕は、「じゃあね!」と言いながら颯爽と逃げて行き、
「待てテメェ」
その瞬間、長谷川蓮が私と小田の間を凄まじいスピードで駆けて行った。
ちなみに私の机は無事だが、まあまあ机をなぎ倒していったので教室は大惨事。
「台風かよ」
とボヤいた小田に至極同意である。
