狂気のお姫様

見ると、気が強そうなギャルたち。

「あー…鹿島杏奈と仲良いグループの…」

ボソッと言った小田に、なるほどと思う。
こんなギャルとまで仲良くしてらっしゃるのね鹿島杏奈。手広くやってんな。


「あたしたち、杏奈の友達なんですけど」

と続けるあたり、鹿島杏奈と天に接点があると思っているのだろう。上からなのが鼻にくる。



だが、



「ねーねー、律ちゃんさー」



佐々木夕はガン無視である。



「蓮ちゃんに貢ぎ物あげようと思ってんだけど、なんか食べ物持ってなーい?」

「いや持ってませんよ」

無視されたことにハテナ顔のギャルたち。
ちなみに私と小田も戸惑った。そして普通に答えてしまったではないか。

「小田ちゃんは?」

あ、めっちゃ今小田、私に話しかけるなよ〜って顔してるわ。絶対佐々木夕気づいてるだろ。面白がってるなこれは。

「いや…持ってませんよ…あ、ねり梅なら」

「やめとけ」

思わず突っ込んでしまったじゃないか。どんだけねり梅推すんだよ。分かったよ。そんなに推したいならもう永遠に推せよ。


「ねり梅…?」

「あ、いいんです気にしなくて」

怪訝そうな顔してる佐々木夕。その顔こないだ羽賀愁にされたわ。


しかしだ、今はそれどころではない。


「あの」

そう、ギャルたちだ。まだ諦めてないらしく佐々木夕に話しかけている。いや明らかに無視されたじゃん。立ち去ろうよ。

「コバエうざ」

おっと〜、童顔の暴言の破壊力〜。


まさか自分に言われたと思ってないギャルたちに哀れな目を向けるが、私のその顔が気に入らなかった様子。


「佐々木さん!コイツ杏奈のことイジメてるんです!」
「天の方たちを近づけさせないようにしてるんですよ!」
「騙されてます!」
「話しかけない方がいいです!」
「杏奈の方が可愛いですし!」

よくもまぁ信憑性皆無なことをピーチクパーチク言えるものだ。

自分たちが正しいと思ったらもう周りは見えないんだな。

そして、佐々木夕のオーラが変わったことに気づかないお前らはバカだ。


小田なんてもう死にかけである。




「さっきからうっせぇんだけどブス」

きっつ〜〜〜!!!この人可愛い顔してすごいこと言う〜〜!!

思わず小田と顔を見合わせる。良かったな。私たちブスじゃなくて。

「え…」

「性格もブスなのに顔面もブスってよく生きてこれたなお前」


矢継ぎ早に怒涛の悪口を繰り出す佐々木夕にまあまあドン引く私と小田。

「俺より可愛かったら性格ブスでもまぁ許せたかもしんないけど、その顔で?」

ハンッと笑う佐々木夕に、口出しする者は誰もいない。

「ブスに話しかけられるとか俺までブスになったらどうしてくれんの」

いやあなたの場合ブスのウイルスより自分の顔面のDNAの方が確実に強いからブスに感染することはないでしょうね。