「…」
「…」
完全に思考がシャットアウトし、硬直した私を他所に、飄々とした顔で体育館を見下ろす羽賀愁。
え、やばいやばい、私普通にさっきタメ口使ってたし、待って、ていうかなんで話しかけられてんの。あの飛び蹴り事件以来会ってないのに。ていうか前回もこの人とは喋ってないし。あ、双眼鏡奪われた。見てる見てる。いやあんたが見ても。ほんとちょっと待って。
まじでなんで話しかけられた。
…そして気づかなかった。
普通の人だったら後ろに立たれても、尾行されてても気づくのに。本当に何者……やはりそれだけの実力があるということなのか…。なんだかちょっと悔しい。
いやいや、じゃなくてだな、
なんで話しかけられた。
コンマ1秒で以上の全てが頭の中に流れ、もはや人違いではないのか、もう殺られる前に殺るしかない、と頓珍漢なことを思い出す始末。
「何してんの」
しかし人違いであってくれ、という願望は一瞬でバッキバキに崩された。
「いやぁ、偵察を少々…」
「ふーん」
興味なさげに双眼鏡をクルクル回す羽賀愁。
興味ないなら聞くなよ!ていうか早々にどっか行ってくれ!心臓がもたない!と思いながらも、はじめて間近で見た羽賀愁の顔にびっくりする。
不思議なぐらい綺麗だ。
髪の毛が銀色のせいもあると思うけど、全体的に色素が薄いため今にも消えそうなくらい儚い。かっこいいよりかは…そうだな、美しいとか綺麗とかそういう言葉の方が似合うだろう。
「なに」
「いや…」
危ない。ボーッと見つめてしまっていたらしい。どんな人かも分からないし、天の中で1番やばい人だって聞いてるから、顔面綺麗ですね、なんて迂闊に言えるわけない。
なんなんだこの状況、と思いながらクルクル振り回されてる哀れな双眼鏡を見つめる。
すると、ふいに羽賀愁の手がスッとこちらに伸びてきて、
「…っ!」
脳みそが瞬時に危険信号をキャッチし、反射的に後ろに飛び退く。
「いい反応」
「どうも…」
「殺さないよ」
「…」
なんでこの人、私が今『殺されるかも』と思ったって分かったんだろう。羽賀愁の手は完全に私の喉元に真っ直ぐ伸びてきてた。
やばいな。とりあえず総じてやばいことは確か。陽ちゃんめ、なんて人と友達になってんだ。顔面だけで言うと神仏こえてるぞ。
これはもう、可もなく不可もない無難な女と化すしかない。
「あいつらと、なんかやんの?」
「あ、はい、多分」
「喧嘩?」
「あ、まぁ」
「なんで?」
「えー…呼び出されまして…」
「何したの」
「何もしてないんですけどね私は…」
「ふぅん、楽しそうだね」
「あ、はい」
「飴持ってない?」
「あ、はい…えっ」
完全に『あ、はいしか言わない無難女』と成り下がってたので、いきなりの方向転換に着いていけず、反射的に答えてしまった。
が、飴なんて持ってねぇ。
「いや、すみません、持ってな……あ、ねり梅なら」
いやバカ!バカだよ今のは!小田のせいだ!小田がこないだ爆買いしたねり梅くれたんだよ今日!くれるなよ!いらないよ!そもそも私梅そんなに好きじゃないよ!全然飴と似ても似つかないよ!ていうかなんでいきなり飴なんだよ!
頭の中で盛大なツッコミを繰り広げるも、顔面だけは平常に保っているので目の前の相手には届くはずもない。
「…」
完全に思考がシャットアウトし、硬直した私を他所に、飄々とした顔で体育館を見下ろす羽賀愁。
え、やばいやばい、私普通にさっきタメ口使ってたし、待って、ていうかなんで話しかけられてんの。あの飛び蹴り事件以来会ってないのに。ていうか前回もこの人とは喋ってないし。あ、双眼鏡奪われた。見てる見てる。いやあんたが見ても。ほんとちょっと待って。
まじでなんで話しかけられた。
…そして気づかなかった。
普通の人だったら後ろに立たれても、尾行されてても気づくのに。本当に何者……やはりそれだけの実力があるということなのか…。なんだかちょっと悔しい。
いやいや、じゃなくてだな、
なんで話しかけられた。
コンマ1秒で以上の全てが頭の中に流れ、もはや人違いではないのか、もう殺られる前に殺るしかない、と頓珍漢なことを思い出す始末。
「何してんの」
しかし人違いであってくれ、という願望は一瞬でバッキバキに崩された。
「いやぁ、偵察を少々…」
「ふーん」
興味なさげに双眼鏡をクルクル回す羽賀愁。
興味ないなら聞くなよ!ていうか早々にどっか行ってくれ!心臓がもたない!と思いながらも、はじめて間近で見た羽賀愁の顔にびっくりする。
不思議なぐらい綺麗だ。
髪の毛が銀色のせいもあると思うけど、全体的に色素が薄いため今にも消えそうなくらい儚い。かっこいいよりかは…そうだな、美しいとか綺麗とかそういう言葉の方が似合うだろう。
「なに」
「いや…」
危ない。ボーッと見つめてしまっていたらしい。どんな人かも分からないし、天の中で1番やばい人だって聞いてるから、顔面綺麗ですね、なんて迂闊に言えるわけない。
なんなんだこの状況、と思いながらクルクル振り回されてる哀れな双眼鏡を見つめる。
すると、ふいに羽賀愁の手がスッとこちらに伸びてきて、
「…っ!」
脳みそが瞬時に危険信号をキャッチし、反射的に後ろに飛び退く。
「いい反応」
「どうも…」
「殺さないよ」
「…」
なんでこの人、私が今『殺されるかも』と思ったって分かったんだろう。羽賀愁の手は完全に私の喉元に真っ直ぐ伸びてきてた。
やばいな。とりあえず総じてやばいことは確か。陽ちゃんめ、なんて人と友達になってんだ。顔面だけで言うと神仏こえてるぞ。
これはもう、可もなく不可もない無難な女と化すしかない。
「あいつらと、なんかやんの?」
「あ、はい、多分」
「喧嘩?」
「あ、まぁ」
「なんで?」
「えー…呼び出されまして…」
「何したの」
「何もしてないんですけどね私は…」
「ふぅん、楽しそうだね」
「あ、はい」
「飴持ってない?」
「あ、はい…えっ」
完全に『あ、はいしか言わない無難女』と成り下がってたので、いきなりの方向転換に着いていけず、反射的に答えてしまった。
が、飴なんて持ってねぇ。
「いや、すみません、持ってな……あ、ねり梅なら」
いやバカ!バカだよ今のは!小田のせいだ!小田がこないだ爆買いしたねり梅くれたんだよ今日!くれるなよ!いらないよ!そもそも私梅そんなに好きじゃないよ!全然飴と似ても似つかないよ!ていうかなんでいきなり飴なんだよ!
頭の中で盛大なツッコミを繰り広げるも、顔面だけは平常に保っているので目の前の相手には届くはずもない。
