狂気のお姫様

「私も慰めてほしんだけど、濡れ衣着せられたんだけど」

「いや、ほんとに盗ってるからねあんたは」

「そうとも言う」

「そうとしか言わないけどね」

「バレてないし」


小田に今回の事件の種明かしをし、それからは平和に授業が終わっていった。いやぁ、2限は本当に空気が悪かった。まぁ私は楽しんでたけど。


「でもあの2人は東堂が何かやったって分かってるでしょ?」

「そだねー、また仕掛けてくるかもしれないね。予想以上に絞られてたし」

「帰り道後ろから刺されるかもよ」

「小田、私の後ろ歩いて帰ってね」

「おい、刺されろってか」


今更彼女たちが誰に何を言ったところで信じる人はいない。そうすれば自ずと分かる、直接私のところに来るだろうな。


「来るなら来るでいいんだけど、もうちょっと頭使ってほしいよね、やりがいがなさすぎ」

「いやあんたのやり方が高度なんだよ。何あの録音機械」

「文明の開化だよね」

「携帯ジャックってのも意味わかんないし」

「最近は物騒だからね〜」


ほほほ、と笑うと小田は「あんたが物騒だわ」と言い捨てやがる。何だし、普通にしてたら私だって物騒じゃないし。


「私も東堂みたいになんか盗られるかもしれないからロッカーに置いとこ」

「それがいい」


ちなみにロッカーには鍵がついてるので、破壊されない限り何かを盗られる心配はない。ただまあまあの不良校なので、破壊されることもしばしばあるようだ。みんなお茶目だね。学校側も大変だ。


「さ、帰ろ帰ろ」


鞄に教科書を詰め込んでると、



「東堂さん」

と、呼び止められた。

見ると、同じクラスの女の子。しかも私にマイナスな感情を抱いてる方の。


「なに?」

「先生が呼んでるよ、体育館だって」


あら、なんだそういうことか。喧嘩でも売られるのかと思った、と少し拍子抜けしたが、なんだかおかしい。


「じゃあ先帰るぞ東堂、彼氏いるし」


薄情オブ薄情な小田は先に帰るとほざきやがるが、小田の肩をむんずと掴み、帰るのを制止する。


「なんだよ東堂」

「なんで体育館なの?」


小田の呼びかけにはガン無視を決め込み、その女の子に聞くと、少しだけ眉間に皺がよったのが分かる。


「え、知らなーい、体育の先生じゃないの?」

「先生から直接私を呼べって言われたんじゃないの?体育の先生かも分かんないの?ていうかどの先生?」


矢継ぎ早に質問を繰り出すが、女の子は口元を引き攣らせて、


「は、知らないし!そ、そんなん行ってから聞きゃいいじゃん!!」


と、吃りながら逃げて行った。