「いや、私たちは、違くて、あの」
「何が違うんだ言ってみろ!!」
「ヒッ…わ、私たちアミの教科書なんか盗ってない…っ」
「じゃあ誰の教科書盗ったって言うの!現に私のがないんだけど!」
先生と安西さんに言い詰められる2人は滑稽で、しまいには「東堂律がアミの教科書盗ったんだって!」という始末。まぁ合ってるんだけどね。
だけど今更私を犯人に仕立てようとしたって「テメエらまだそんな嘘吐いてんのか!!!」と先生が怒鳴るのは当たり前のことで。私は、安西さんて下の名前アミって言うんだー、へー、と呑気に思うだけだ。
ま、直接戦っても良かったんだけど、別に暴力振るわれたわけでもないし、こういうチマチマ作業して相手を追い詰めていくのも嫌いじゃない。むしろ好きだ。
「こ、こんな音声知らないし!!」
「そ、そうだよ!誰かのでっち上げです!!」
焦りまくっているのか、ただただ意味のない弁解をするだけの2人。あーらら、何か企むなら失敗したときのことも考えないと。
「お前の携帯から鳴ってるんじゃないのか!!ここから聞こえたぞ!携帯出せ!!!」
先生は青筋を立てまくし立てる。おー怖い。ターゲットの2人は完全に震えていて、生まれたての小鹿みたいだ。
「わ、私じゃ、ないです…!」
そう言いながら携帯を机の上に出すリカとやら。
しょうがない、もう1回鳴らしてやろう。
机の下でボタンを押すと、
《ジジジ……あったあった!…ジジッ…》
先程と同じ音声が流れ出した。それはもちろん、リカとやらの携帯から。
「な、なんで!?ちが、違うのに!!」
君の携帯はジャック済みだよー、と思いながら高みの見物。
バーーーンッ!!!
ちなみに今の音は先生がリカの携帯を投げつけた音だ。
あらあら、泣いちゃって。可哀想に。
そのあと、2人は先生に引き摺られて行き、帰ってくることはなかった。こってり絞られてるんだろうなぁ。
安西さんはと言うと、皆に慰められている。まぁ別にそれはいいんだが、私も濡れ衣着せられたんだけどな。客観的に見ればだけど。
