狂気のお姫様

「東堂さん」

小田に頭を預けてると、ふと隣から呼びかけられる。

そこには、クラスの女子生徒達。

「鹿島さんの噂って本当なの?」

彼女たちは私に噂の真意を確かめにきたみたいだ。ほぉ、悪くない選択だな。自分の目で、耳で確かめることは良いことだ。

そんな彼女たちに私は少しだけ困った顔をして微笑む。

「全然身に覚えがないんだよね。確かに、天の人はたまーーーに話しかけてくれるけど、最近は話してないよ?天の人たちに聞いてもらえると、私が言ってることがほんとだって分かると思うんだけど…」

「そ、そうなんだ」

彼女たちは少しだけ口元を引き攣らせる。天に直接聞くなんてできないだろう。しかし、噂の張本人が否定して、なんなら天に聞いてみれば?とまで言ってるのだ。賢ければ、噂が嘘であるかもしれない、と思うだろう。

だからきっと、この子たちは中立。天に関わることだ。バカでない限り無闇に関わらないと思うし、私を完全に敵と見立てて攻撃したりもしない。ただ、本当に私が悪者だった場合は、鹿島杏奈や天に取り入るために敵になるかもしれないが。


「災難だったね」

「うん。なんでこんなありもしない噂広がってるんだろうね」


周りにも聞こえるぐらいのボリュームで言う。ひどい噂が広まって困ってますよアピールにぬかりはない。まぁ本当のことだしな。

さて、クラス内にも鹿島杏奈信者と言う名の敵が何人か潜んでるみたいだが、学生がやる悪戯なんて私にとって脅威でもなんでもない。


「東堂性格悪いよな」


お前にだけは言われたくはないよ、と思いつつ、また小田の方に頭をもたげる。


「ま、全員敵にはしたくないからね」

「さすがに全員はキツいか」

「いや、全員相手にするとここが廃校になるから」

「おっとまさかの圧倒的勝利」


当たり前だろ。何言ってんだ。


「世の中には便利なものがたくさんあるからね」


ふふふふ、と不気味に笑う私に若干引き気味の小田。失礼な奴だなまったく。

そのあと、授業を受け、お弁当を食べ、いつもと変わりないように過ごした。たまに鋭い視線で睨まれ、教室の中でもすれ違いざまに「糞ビッチ」と罵られる。証拠に残らないからって言葉でせめてくるやつっているよね。頭悪いよな。そんな悪口一言で私が悲しむとでも思ってるんだろうか。

ただ、わざとぶつかってきて「ごめーん、見えなかったぁ」って笑いながら謝る奴にはイラッときた。

そして私、ビッチじゃないんだけどなぁ。ビッチの概念を分かってそう発言をしているんだろうか。

よくよく考えても、いや考えなくても鹿島杏奈の方がやばいだろう。典型的な猫かぶり腹黒女じゃないか。女の子は女の子の猫かぶりを見破れる、とよく言うが…。そんなものはやっぱりただの言い伝えなのかもしれない。ファーストコンタクトで思うけどなぁ……、絶対友達になりたくない、って。

まぁ、私を睨んで悪口言ってきたやつの顔も、わざとぶつかってきたやつの顔も覚えたし、不穏な話も耳にしたし、

今日は置き勉してから帰らないと、ね?