狂気のお姫様


周囲から「東堂さんて遊ばれてたんじゃないの?」「佐々木さんとも仲良いの?」などと声が聞こえる。肝心の鹿島杏奈は口元をわなわな震わせて皆に分からないようにコチラを睨んでいる。


「いや、次移動教室なんで。ね、小田」

「うん、そだった。そだったね」

ただの数学の授業を移動教室にし、なんとか逃げようと試みる。


「じゃあざんねーん」

佐々木夕は諦めてくれたようだ。ていうかこの人ただ面白がってるだけだろ!


「ねぇねぇ、律ちゃんて夕さんたちと仲良いんだね?」


しかし簡単には帰れない。陽ちゃんと佐々木夕に無視される鹿島杏奈は、次に私に話しかけてきた。


「律ちゃんたちが屋上行くなら、私も行きたいなぁ」

「そう」


私は無視するわけにはいかないからな。


「ね?友達だし、いいでしょ?」


そんなこと言われても、私は許可できない。ていうか友達じゃねぇよ。


「私に言われても。今のは、佐々木さんが来ていいよって言ってくれたからだよ」

「えぇー、律ちゃんて意地悪ぅ!私ももっと仲良くなれるように頑張らなきゃ!」


意地悪なんて言ってねぇよ正論だよ、と思いながら冷めた目で見つめる。

屋上に行くのを拒否られたのは、まだ仲良くなってないからだと思っているらしい。


「また私も誘ってくださぁい」


と猫なで声で佐々木夕に言うが、佐々木夕は答えない。


「まぁ、私たち急いでるんで。じゃ」

「律ちゃんまたねー!」


ヒラヒラ手を振る3人に、小田と共にペコリと頭を下げる。

鹿島杏奈はまた四ツ谷鳴に話しかけているようだった。


「自分が拒否られてるって分かってないのかな」

「過信してるんだろうね」

無駄に精神が削られたなぁ、と思いつつ教室に戻り、結局お昼を買い損ねた小田に弁当を分けてやる。


「いやぁ、でもビビった。まさかあんたが屋上に呼ばれるなんて」

「私だって想定外だわ。絶対あの人たち面白がってる」

「ま、鹿島杏奈はプライドが許さないだろうね」


さて次は何が起こるのやら。