狂気のお姫様

♪♪♪

ふと電話が鳴る。

「……?」


画面を見るが、そこには『非通知』の文字。

こんな時に非通知の電話……?私に……?


「律ちゃん?電話?」

「はい、ちょっと出てきます」

「いってらー」


ガラガラとドアを開け、佐々木夕の病室を出る。


ピッ


「……はい」

[……東堂律さん?]

「……」

[……急に悪いけど、俺は]

「神尾……大河……」

[覚えててくれたんだ]

「なぜ私の番号を知ってるんですか」

[俺もその筋だからね]

「なんの目的ですか。今、何が起こってるか分かってますよね」

[分かってるからこそだよ]


こないだ言っていた、千秋ちゃんに『騙されている』という言葉が脳裏に浮かぶ。


[こないだはいきなり悪かった]

「用件を言ってください」

[成瀬千秋は敵だと言ったよね]

「……」

[今から病院の西側の裏口に行って]

「……今から?」

[何本か木が植わってるから、そこに隠れて駐車場を見て]

「……どういうこと」

[見れば分かるはずだから……]

「なに、何を言って……」

[東堂律さん、俺は関係ない人を巻き込みたくないんだ。そしてこの争いを終わらせたいし、誤解があるなら解きたい。それだけは信じてほしい]



そう言うと、電話はプツッと切れてしまった。

西側の裏口……?

今神尾大河はこの病院にいるということ?

とりあえず、言われたとおりに1階へ降りる。

ジローさんたちには……、言ったほうがいいんだろうが、神尾大河の口ぶり的に時間がなさそうだった。

病院なので、裏口だからといって人がまったくいないわけではないから、危険かと言われたらそうではないだろう。

心がザワザワする。

彼は私に何を見せたいのだろうか。


できるだけ足音を立てずに裏口へ向かう。

「……木、駐車場」

数本植わっている木の陰に隠れ、その先にある駐車場を目を凝らして見る。

関係者しか停めなさそうな、普通の駐車場だが……、一台だけ、異様なオーラを放つ黒塗りの車。


「……あ」

たまたま中から人が出てくる。

あれ、千秋ちゃん?

なんで千秋ちゃんがここに……?

もしかして陽ちゃんのことを聞いて、顔を出しに来た……とか?

一応、東堂と表面上は協力関係にあるため、何らおかしいことではないだろう。


「……っ」

が、次にでてきた人に、息を飲んだ。


「黒髪……ツーブロック……」


生ぬるい風が、私の頬を掠めた。