狂気のお姫様

「律ちゃん!」

包帯が巻かれた足を投げ出し、ベッドに座っていた佐々木夕の顔がこちらに向く。


「無事ですか」

力なく微笑むと、佐々木夕は珍しく優しく笑う。


「無事」

「良かったです」

「陽介、まだ目覚まさないって?」

「はい。でも呼吸は安定してるので、そのうち目を覚ますだろうって」

「そっかー」


佐々木夕は目線を落とす。


「俺のことかばったからさぁ」

「…」

「なんかすげぇ罪悪感なの、今」

「珍しい」

「でしょ?陽介ごときにこんな感情になるなんて、癪」


この人、馬鹿なのにこんなこと考えていたのか。


「え、今失礼なこと思ってない?」

「いやまったく」

危ない危ない。


「なんかさぁ、陽介や律ちゃんの家のことは知ってたけど、やっぱり全然違うわ」

「あ、さっちゃんから話聞かれたらしいですね」

「さっきの着物姿の人でしょ?気は遣ってくれてたけど」

「治療終わってすぐで悪いけど…ってさっき言ってました」

「本職のオーラって違うねなんか」



一般の高校生が、本業の人間と関わることなんて、余程のことがない限りは有り得ないことだろう。


「いやぁ、凄まじい体験をしたって感じ」

佐々木夕は感情が追いついていないようで、「ふぅー、なんか気疲れした」とベッドにもたれる。

私に間違われて轢かれたのだから、なんとなく佐々木夕に罪悪感を感じてしまう。

情報を言うわけにもいかないので、そんなことは言わないが。



「すぐ退院はできるんですか?」

「一応ねぇ、足折れただけだし」

「結構重症ですけどね…」

「片足あれば喧嘩は可能」

「ポテンシャルどうなってんですか」


軽口を叩けるくらいには元気であることに、少しだけ安心する。と言っても、メンタルが大丈夫かどうかはまた別の話だが。


「みんなには…」

「あ、詳しいことを話さないなら連絡していいって言われたから、さっき連絡した」


他の3人も、驚いていることだろう。

天の1人が足を骨折し、もう1人はしばらく休みときたら、よからぬ噂がたちそうだ。


「とにかく俺は大丈夫だから」

「珍しく優しい」

「ついに声に出たな」

間違った。


「勢い余りました」

「せっかく気遣ってあげたのに!愁ちゃんに告げ口してやるからな!!」

なんか分かんないけどやめてほしい。