狂気のお姫様

ヘルメットの音を皮切りに、物騒な武器を持った男たちが突っ込んでくる。


「君に決めた!」

「ぎゃっ」


そんな中、ポ●モンのサ●シか?と思うほどの声真似で私を前に押し出す金髪。もはやさすがとしか言いようがない。そこまでクズを押し通すならもう応援するよ。


一応女である私が前に出されたことに、一瞬狼狽える男たち。

この女はどういう立ち位置なんだ?やっていいのか?という迷いが見てとれるが、そういうところが甘い。

うちの金髪銀髪と違って優しいなぁ、などと思うが、私も、今日も家から迎えが来ているので、早く帰らねばならない。


「ゲフッ!!」


だから、おとなしく殺られてくれ。


「おお〜、さすが律ちゃん」

「チッ」

「し、舌打ちされた…」


目の前の男が振りかぶった鉄パイプを、振り下ろされた瞬間に左手で掴み、男の腹を蹴り上げる。

後ろの金髪は感嘆の声を上げるが、目の前の男たちは目を見開く。


「この女…っ!」
「こいつ、こないだ噂になった女じゃ…!」


噂?

もしかして鹿島杏奈の血まみれ事件のことだろうか。天と顔見知りということもあり、尾ひれがついた噂は、他校にも広がっているらしく、その噂の女と私が、今合致したらしい。

が、こちらは会話する気力もないのだ。

男を蹴り上げた右足を軸に、後ろへ振り返る。


「えっ」


今声を上げたのは、言わずもがな金髪。

やられたら、やり返すがモットーなもので。


「グエッ」

鉄パイプの曲がった先端部分に鳴さんの首をかけ、そのまま左足で踏み込む。

思いがけない力に、鳴さんは体勢を崩し、敵陣へ突っ込んだ。


「ひどいよ律ちゃん!!!」

が、そのまま1人2人蹴散らすんだから、フィジカルの強さは侮れない。

今の体勢から、どうやったら敵を倒せるんだ…。

まぁ、敵のど真ん中に放り込んだので、殺らなければ逃げることもできない。私を押した罰だ。


そして、銀髪はというと、ポケットに手を入れたまま、男たちを足蹴にしているし、「俺のヘルメットどこ行った」なんて悠長にキョロキョロしているので、逆に相手が可哀想になってくる。


「律、俺のヘルメットなくなった」

「投げるからですよ」

「探して」

「無茶言う」


駐輪場はもみくちゃ状態。

喧嘩が目的なのか、ヘルメットを探すことが目的なのか、もはや分からない愁さんは、敵を蹴っては踏み、蹴っては踏み、ずんずん前に進んで行く。

前々から思ってはいたが、やはり怪物だ。動きが人間離れしすぎている。

なのに、頭の中にはヘルメットの行方しかないのだから、意味が分からない。


「てめぇこの野郎!!」
「死ねぇ!!」

標的に、何故か天ですらない私も含まれてしまったため、他2人と同様に敵をさばいていく。


「鳴ー、俺のヘルメット探して」

「はぁ!?お前自分で投げたんだろ!?」


喧嘩中、こんなにふざけた態度な奴らが果たして他にいるだろうか…。はぁ…。