狂気のお姫様

「チッ…強火ファンが……」

鳴さんが何か呟いたが、愁さんはガン無視。

一応撫でられ続けるのも気まずいので…、というか恥ずかしいので、ササッと距離をとる。


「あー、逃げられた」

愁さんはどこか名残惜しそうにそう言うと、鳴さんからヘルメットを受け取る。

本当に行動が読めない。

落ち着け私、この男にはなんの他意もないはずだ。ただ私の反応を見てほくそ笑んでいるだけなのだ。絶対そうだ。



「あ、忘れてた」

ふと、愁さんの声が上から降ってくる。

愁さんを見上げると、私の後ろに視線がうつるのが分かった。


「?」

「追われてたんだった」

「は!?誰に!?」

おもむろに、鳴さんの視線も私の後ろに動いて、何かを察した。



「てめぇ逃げやがって!!!!」
「羽賀ぁ!!!今日こそぶっ殺してやる!!」
「待てごるぁあ!!!!!」



こいつ、やりやがった。



物騒な怒声が聞こえたかと思うと、ゾロゾロとガラの悪い輩たちが駐輪場に流れ込む。

勝てるわけもないのに、また性懲りもなく、天に喧嘩を売ってるのか。

と思ったが、制服が違うところを見ると、うちに乗り込んできた他校の馬鹿どもらしい。


「しゅ、愁くん?お前、何面倒事連れてきてんの?」

「いや、なんかついてきた」

「俺今日喧嘩の気分じゃないんだけど???」


喧嘩に気分なんてあるのか。


「まぁでも、律いるし」

「ちょちょちょっと、それどういう意味ですか。私関係ないですよね」

「あそっか、律ちゃんいるのか」

「いや鳴さんも納得しないでください…って何掴んでるんですか」


自分はここを通りがかっただけですよ〜、な態度で裏門をくぐり抜けようと思っていたのに、金髪銀髪両方にガシッと腕を掴まれ、身動きがとれなくなってしまった。



「いやいや、逆になんで逃げようとしてるの?律ちゃん」

「いやだから、私関係ない…」

「律?助け合いは大事でしょ?」

「助け…合い…?」


大男2人に捕まっている姿は、もはや人質。

「四ツ谷もいるじゃねぇか」
「なんだぁその女は?」

言わずもがな、馬鹿…いや、他校の男どもとも自然と目が合う。


「最悪だ」

本当に最悪だ。

こいつらと会うと本当にいいことがない。


「四ツ谷の女か?」
「へぇ、いい女じゃねぇか」
「なんか捕まってね…?」
「どういう状態だあれ…?」


ほら!もはや向こうが困惑してるよ!!!!


「は?なんで鳴の女になんの?」

で、なんで銀髪はキレてんの?

「なんかムカつく」

愁さんはそう言うと、


ゴツーーンッ


右手に持っていたヘルメットを男どもに投げた。


「愁すげぇ!命中!」

「何やってるんですかぁ!!」


あぁ、もう逃げられない。