狂気のお姫様

やはり予想していたとおり、東堂を狙っていた小物、荒木組のバックには、神尾組がついているらしい。

そして、その若頭である神尾 大河が、本来私にお見合いを申し込んでくる手筈だったと。

前に千秋ちゃんと話した時も、神尾からも縁談があると言っていた気がする。

それがこないということは、途中で経路変更した…のか。



ジローさんに話せることは全て話した。

私の主観も話したし、あとの判断は任せるしかない。


「予想以上にだった」

「だね」


ジローさんとの話が終わり、陽ちゃんと自室に戻る。

しばらく陽ちゃんと行動するように言っていたのは、最近東堂の組員が狙われているから、だそうだ。

そんなリスキーなこと、本職がするのか?と思ったが、荒木が荒木なら神尾も神尾で、悪い噂が多いところだと言う。

だから今回の敵は神尾で確定だ、というのも変な話だが。

一般人である私や陽ちゃんを狙うことはないとは思うが…、万が一ということがある。

一緒に行動しておいて損はないだろう。



「神尾 大河だけどさ」

「ん?」

「悪いところの若頭には、どうしても見えなかったんだよね」

「んー、雨だったし、遠かったから、俺はどんなやつかはあんまり分かんなかったけど」

「なんか……、とにかく必死そうに見えた」

「そりゃ、もしその話が本当だったら、自分の組が濡れ衣着せられてるってことだろ?必死にもなるだろ」

「というよりかは…、なんか、私を心配してた」

「お前を?」

「組を守りたいとか、東堂を味方にしたいとか、そんなんじゃなくて、ただ私に、気をつけろって言ってるように感じたの」

「んー……」


だから余計に分かんなくなったんだけどさ。

あの若頭がいい人だとしても、組のトップではないし、今日のあの行動が、神尾の本意かどうかなんて分からない。


「とりあえず、佐助さんが出るんだろ?俺らは警戒しながら待つしかない」

「そうだね」


陽ちゃんは、卒業したら父親の跡を継いで東堂に入るのだろう。

だから陽ちゃんにも、あの鬼畜ジローさんは、あらかた情報を渡しているらしい。

組員の子どもとはいえ、小さい頃から知っているとはいえ、そこらへん抜かりないのはさすがだ。


「体育祭のときの黒髪ツーブロの男のことも分かってないし」

「でももう見かけないよね」

「俺たちに、わざと気づかせたかったんじゃないかって思ってるけど、分かんね」

「……わざと」


確かに、隠すこともなく私を見つめていた。

でも、なぜわざと気づかせる必要があるのだろうか。


「俺の憶測だから忘れろ」

独特の重い空気が苦手と言いつつ、こうやって考えてしまうんだから、やはり私もジローさんの血筋なんだろうな。