狂気のお姫様

「ていうかお見合いはいいんですよもう。授業中ってこと知ってます?」

「ん?」

ん?じゃないわ性悪チビめ。

「授業より律ちゃんのお見合い話のほうが大事だし?」

授業のほうが大事だわ。

「授業中じゃなきゃ律ちゃん捕まえられなさそうだし?」

まぁ逃げるわな。


「だから今捕獲したんだよ?」

「捕獲って言うな」

おっと、思わずタメ口が。

ていうか私の捕獲の仕方を完全に理解しているみたいな言い方するな。

この2人が揃うとろくなことが起きない。

割と珍しい2人だとは思ったが、相性はある意味最高。私にとっては最悪。


「あ、あともうちょっとで愁も来るらしいよ」

「げ」


もう私から面白い話が聞けないと思ったのか、そういえば、と鳴さんがサラッと口にした言葉に、思わず声が出る。

愁さんと言えば、体育祭の妬いた事件以来である。

別にあれしきで気まずいとかそういうわけじゃなくて…、そういうわけじゃないんだけど…、衝撃が強かったんだよ衝撃が。


「あれ、もしかして愁ちゃんと何かあった?」


私の、微々たる表情の変化に敏感に反応した2人は、今度はこっちの話に興味津々。


「いや何もないんで!」

「何もない顔じゃなかったよね!今!」


そういうことを言われると、逆に意識してしまうだろ!!!


「体育祭で嵌められたことをまだ恨んでるだけです」

咄嗟に誤魔化すが、恨んではいるから間違いではない。


「うわ、この子根に持つタイプだわ、夕」

「律ちゃんに根に持たれて生きてる愁ちゃんすげぇ」

口を開くと失礼しか出てこないなこいつら!!

ガチャ

屋上の扉が力なく開く。

しまった、逃げられるなら逃げようと思っていたのに。


「あ、噂をすれば」


視界の端で、さらさらの銀髪が靡くのが分かる。

「こっちこっち」

私の前でヤンキー座りをしたまま、鳴さんが愁さんを手で呼ぶ。


「あ、律いんじゃん」

「さっきメッセ送っただろ」

「見てない」


不憫な金髪。

そろりそろりと顔を上げる。

バチッと目が合い、少しだけ心臓が跳ねるも、当の本人は何食わぬ顔で、私の顔をぺたぺたとさわ…………ん?なんで触られてんの私。


「律、無事?」

「いや、なんで私こんな触られてるんですか」

「律、本物?」

「クローンか何かと思ってますか」


跳ねたと思った心臓は嘘だったのか、真顔で人の顔をぺたぺた触る男を無表情で見つめる。

「ぶっ……くくくっ……クローンはまじうける……!!これが2体いたらやばい…!!ぶはっ!」

と笑い転げてる佐々木夕と、

「え、クローンならこの律ちゃん持って帰っていい?」

と、私に何をするつもりで持って帰るつもりなのか分からない鳴さんを、完全無視する愁さん。

シュールだ…シュールすぎる…。

たすけて。