狂気のお姫様



「…」

表向きは、だけど。

「うちは跡継ぎには困ってねぇし、姪をどこぞの組にやるつもりはない」

所々滲み出る叔父バカに、少し恥ずかしさを覚える。後ろで待機しているさっちゃんも頷いているようで、この2人は私を一生嫁に出さないつもりなのでは、と考える。

「成瀬よ、ここまで来て理由がそれじゃねぇだろうよ」

今日一低い声を出したジローさんは、機嫌がよろしくない様子。

「やはり気づかれたか」

「煩わしい」

「こちらも慎重にことを運びたくてな、気を悪くするな」

このジローさんに動じないなんて…、公園で鳩に餌やってそうとか思ってすんません…と心の中で謝る。

「実は鼠がいてなぁ、噛まれる前に先手をうっているところだ」

「……ほぉ」

「そちらの娘さんが一般人であることは分かってるが、後々急に巻き込まれるよりは良かろう」

回りくどい言い方だが、こないだ千秋ちゃんが言ってたことだろう。成瀬に内通者がいて、東堂が成瀬を潰すよう仕向けている、と。確かに、東堂と関係性があまりない中で、何かしらの罪を擦り付けられたら、東堂は成瀬を疑うかもしれないからな。

そして、本当の敵がいきなり私に手を出して混乱するよりも、手を組み、敵を明確にした状態で、最初から私を巻き込んだ方がいいだろうと。

推測だけど。

「成瀬を信じろと?」

何をもってして?と挑戦的に首を傾げるジローさん。

が、

「その答えはそちらですでに出ているだろうよ」

と成瀬の組長さんが答えると、隣から小さいため息が聞こえた。

あーあ。

これは絶対面倒なやつだ。

いや、分かってたけどさ、こないだ千秋ちゃんから聞いた感じでさ、私はすでに逃げ場がないってさ。

そしてジローさんのため息がもう、答えだもん。

組の情報収集能力はやはりすごい。だから、ジローさんも今日の結果が分かってただろう。

こんな表向きに組と関わることなんて、今までなかったのに。

「律」

冷たい声色と打って変わって私の名前を呼ぶジローさん。

「分かりました」

もう、こう答えるしかないだろうよ。

こうなると分かってたはずなのに、叔父バカが発動したのか、少しでも私を守ろうとしてくれたのか…、ジローさんは本当に私に甘いんだから。


「律、改めてよろしくな」

「……」

「……」

「……は?お前ら知り合いか?」


こいつ!!!!!!!

これは言わない流れだろうよ!!!!