『ピーーーーーーー』
突如ホイッスルが響き渡る。
「うわビックリした」
小田が両手を耳にやりながら肩をすくませる。
『競技は終了しました。速やかに運動場に集まってください』
無機質なアナウンスは相変わらずだ。
「やっと終わった!!解放された!!!」
バツ持ちなのに最後まで生き残った小田はルンルンで運動場に出る。
運動場もまぁ、変わらず地獄絵図だこと。
「東堂、並ぶとこどこだっけ?」
「もうちょい向こうじゃない?」
人が多すぎて自分たちのクラスが見当たらない。
人をかき分けながら進むも、みんながみんなそうしているため、なかなか進めない。
「今どこにいるかも分からん」
「…」
「東堂?」
いる。
そう思ったのは、本当に一瞬だった。
「東堂?ついてきてるか?」
「いるよ」
いる。
数メートル先。右斜め前。
隠すつもりがないのか、不自然にこちらを見ている黒髪。
こちらも横目で見えているだけなので、ツーブロックかどうかは分からない。が、恐らく陽ちゃんが言っていたのはあの男だ。
「あ、クラスの人見つけた!」
「やっとか」
小田との会話を続けつつ、意識は右斜め前の男に全集中。
私を東堂律だと確実に分かっているようだ。
自分のクラスに近づくに連れ、徐々にその男との距離も縮まる。
相手が何を考えているのか分からない以上、気づいたことに気づかれないよう全力を注ぐ。
「うちの学校こんなに人いたっけ」
「はじめてこんな人いるの見たわ」
目の前を通り過ぎる。
何食わぬ顔で。
友達と普通に話している高校生を演じて。
「やっとたどり着いた」
「人に飲まれて死ぬかと思った」
そして、不気味に思えるほど、何もなかった。
背中に刺さる視線を残して。
