狂気のお姫様

「気配消して近づくのやめてもらっていいですか……」

私の変な叫び声も意に介さず、飄々とした顔でこちらを見る銀髪にため息が出る。

「律の反応が面白いから悪い」

理不尽。

「何してるんですかこんなところで」

「盗み見してる律の盗み見?」

「人聞き悪過ぎる」


恐らく競技が終わるまで長谷川蓮と離れないであろう小田は、意気揚々と忠犬を盾にしているので、もう大丈夫だろう。あいつらチーム違うのにな。長谷川蓮と同じチームの人たち、可哀想に。南無三。


「小田、バツ持ってんの?」

愁さんは、挙動不審な小田と長谷川蓮に目を向けながら額の汗を拭う。

「そうなんですよ。だから面倒だなって」

「俺もバツだよ」

「…」

「…」

「えっ」

「ほら」

「いや離れてください今すぐ」


目の前でバツが描かれた赤いハンカチをひらひらさせる銀髪。

ほら、じゃないやい。


「別にバツじゃなくても狙われるし俺」

「もっと離れろ」

「追手撒いたしどうしようかなって思ってたら律が」

「遊び道具か何かだと思ってます?」

「疲れた。俺の事守ってね」

「いや、逆逆」


なんで自分より強い人を守るんだよ。

そういえばあの金髪タレ目も私のこと守護神だのなんだの言ってたな……。みんな私のことなんだと思ってるんだ?まさか本当に守ってくれるとは思ってないよな。


「律なら全員蹴散らすでしょ」

「そんなはしたないことしないですから」

「は?」

「すんません」

そのマジな顔だけはやめてほしい。何考えてんのか本当に分からないから。ていうか怖いから。


「まぁ、とりあえず愁さんが敵チームじゃなくて良かったな、とは思ってます」

「なんで?」

「敵に回したら怖そうなんで」

「へぇ」

その読めないところがな。

ギロリと睨むと、愁さんはあぐらをかいた太ももに頬杖をついて、私を見つめる。

銀髪の間から見える目が少しだけ細くなり、

「俺、律には優しいのに」

と口角をあげた。


「わ……」

その顔の破壊力がすごくて。

思わずかたまってしまったのはしょうがないと思う。


「なにその顔」

すぐにいつもの顔に戻ったけど、脳みそに焼き付いてしまったのでどうしようもない。

「いや……ちょっとびっくりしまして…」

「あぁ、律、俺の顔好きだもんね」

「まぁ否めないですけど…自分で言いますそれ…」


なんだかご機嫌に見えるからいいけど、さ。