狂気のお姫様

「うわぁぁあーー!!!!!!」


信じられないほどの雄叫びをあげ、目を剥きながら爆走する小田を見て、満足の私。

「うぎゃぁぁぁぁあああ!!!!!!」

「頑張れ小田〜」

小田にバレないように空き教室からコッソリと、逃げる小田を見守る。


「東堂ぶっ殺す!!!!!」

やだもう。物騒なこと言うわね。

ガチな顔して逃げる小田は、さすがに私のせいであると分かっているご様子。

競技が始まって10分後に取り合いがスタートしたのだが、他の人たちが場所取りに必死になっている中、1ミリも離れない小田。あまりにも挙動不審で、バツ印を持ってるんじゃないかと疑われるほどだった。

まぁそれを持っていたとしても、私といるからか狙われることはなかったんだが。

ただ、やっぱりバツ印を持っている奴と一緒というのはリスクがある。

ということで、撒いたのだ。小田を。

その直後だった、上級生の男たちに絡まれたのは。

「バツ印じゃないんですけど」と言ったものの、引く様子がまったくない…というか、もはや東堂律を狙いに来てるんじゃないかと思うくらいにしつこかったので、遠くで見えていた小田を指さし、売った次第である。

バツ印を持ってないにしろ、競技が終わったときにハンカチを持っていなければマイナス1ポイントとなるので、相手チームのハンカチを強奪するのも1つの手ではある。

ただ、バツ印の人を連れていけば自分のチームにプラス30ポイントなので、この1時間の中で効率が良いかどうかは皆無だが。


「待てこらぁぁあ!!!!!」
「テメェ待て!!!!」
「止まれコノヤローー!!!!!!」

ということで絶賛追いかけられ中の小田。

さすが逃げ足の速いやつだ。運動音痴そうに見えるのにな。

しかし相手は男。さすがに逃げ切るのは不可能。


でも大丈夫。


「小田」


ほら、来た。

ふわふわの黒髪を靡かせながら、小田の前方で仁王立ちする男、長谷川蓮。

来ると思ってたよ。小田のピンチだもの。

「!!!」

爆走している小田も、前方の長谷川蓮に気づいたようだ。

顔が助けてくれと訴えている。

「小田、伏せろ」


お、なんかかっこいいぞ長谷川蓮。

スッ、と姿勢を低くして走り出した長谷川蓮は、小田に害をなす者を排除する気満々。

さすがに小田もキュンとなったはずだろ。



「え!?何!?なんて!?!?なんか言った!?!?」

いや聞こえてねぇじゃねぇか。