狂気のお姫様

「すんませんした」

「いや、いい」


おいしそうなショートケーキとミルクティーを目の前に、テーブルにおでこをつける私とは。


「まさかロリコンだなんて言われてるとはな」

「いや、あの」

「ただ話しかけただけなのにロリコン呼ばわりかぁ」

「や、ほんとに」

「ロリコンねぇ俺がねぇ」

「謝ってんじゃん!!!、!!」


ガバッと頭をあげると、頬杖をついてコーヒーを飲む男は片眉をあげた。


「こんな子供に求婚なんてするかっての」


190cm近くあるからか、座っているだけでオーラがすごい。


「じゃあお見合いなんかしなかったらいいじゃん。もう食べるからコレ。なんならおかわりするから」


綺麗な三角形のショートケーキをフォークでつつく。

そもそも私、悪いか?

誰しも思うはず。ロリコンだ、って。

9つ上だぞ。しかも高校生から見て9つ上だぞ。

ロリコンじゃねぇか。



「開き直ってんな小娘」

「次はガトーショコラがいい」

「いたいけなおじさんにたかるんじゃねぇ」

「いたいけな少女に求婚すんじゃねぇ」

「お前のどこがいたいけなんだ小娘」

「そのままそっくり返すよおじさん」

「おじさん言うな」


さっき自分でおじさんって言ってたじゃん。


開き直ったからか、ロリコンだと思ってたからか、東堂組としての意識が低いからか、もはや親戚のおじさんと話してるみたいな感覚になってしまったのは何故だろう。


「すいませーん。ガトーショコラ1つ〜」

「あ、おいこらガキ」

「ガキなんでよく食べるんだよ」

「東堂の娘だとは思えねぇな…」

「姪だもん娘じゃないもん」


そう言いながらミルクティーをすすると、目の前から深いため息が聞こえる。


「で?」

「あ?」

「協力ってなんなの。いやだ」

「まだ何も言ってねぇぞ」

「絶対めんどくさいもん。いやだ」

「律」


律って呼んでいいって許可した覚えないんだけど。


「私、組にほぼ関係ないの。居候してるだけだから」

「それは知ってる」

「巻き込まれたくない」

「今までなんでお前が巻き込まれなかったか知ってるか」

は?そんなの。

「それがルールでしょ」

「そうだ。暗黙のルールだ」


ま、私は姿隠して仕事してるんだけどね。それは内緒だ。

一般人には手を出さない。それがルール。

私は次郎さんの姪であって娘ではないし、組に入っているわけでもないただの高校生。高校を卒業して組に所属するならまだしも、今の私に手を出すとなるとそれはルール違反だ。すべての組から見放されるだろう。

東堂を潰そうと私に手を出したのに、他の組たちから潰される。なら最初から私を狙うことはない。そういうことだ。


「組同士の喧嘩のためにお前を使うのはルール違反。しかしだ」

「ん?」

「それが見合いなら話は別だ」

「あんだって?」


ショートケーキの最後の一口を頬張ると、目の前の男は眉間に皺を寄せる。