狂気のお姫様


「何言ってんだテメェ」

「誰が偽物だって?」



チンピラ2人は男に向かって凄むが、男はなんとも思っていないようにため息をついた。

チンピラ2人よりも頭1個分背が高い。190cmぐらいあるんじゃないか。何故あの2人は自分よりも体格のいい人を選んだのか。甚だ疑問だ。


「こんなところでカタギ相手に本気になってもなぁ」

そして当の本人はやる気がないようだ。



「話聞いてんのかテメェ!!!!」

そりゃキレるわな。

ずっと自問自答を繰り返している男に、1人が殴りかかる。

が、その拳は軽く受け止められ、そのまま下に振り下ろされると、骨のミシッという音ともに、男の悲鳴が聞こえる。


「え、やるの?俺強いけど」

なんてめんどくさそうなんだ。

が、動きに一切無駄がない。只者じゃないのは見てとれる。


「ふざけんなよ!!!!!」

「何もふざけてねぇけどな」

「このや……ウグッ!!!!」

「自分で喧嘩売っといてボロカスに負けるって格好悪すぎねぇか」


もう1人を目にも止まらぬ速さで蹴飛ばすと、男はポケットから煙草を出す。



見ての通り、単なる一般人ではない。

『東堂の娘』ね……。組関係の人で間違いないだろう。

落ち着いた黒髪に、切れ長の目。20代ぐらいに見えるのに、オーラが渋いのは何故だろう。

いや、見物している場合ではない。

敵か味方も分からないので、逃げた方がいいだろう。


気配を消したまま、スッと腰をあげる。

が、

「で、お前は誰だ?……って女?」

は……?

さっきまでそこで煙草をふかしてたのに、気づいたら男に腕を掴まれていた。

何者なんだこの男。



「おっと、すまねぇな」

スッと手を離され、一定の距離をとる。


「しかしおかしいな。女子高生にしか見えないが、その女子高生が気配を隠して喧嘩を見てたなんて」

「あなた、誰ですか」

「お、隠さないのか」

「今更何を」


この人は強い。

下手に自分の正体を隠しても、すぐに見破られるだろう。


「お前、東堂律か」

「成瀬組の若頭さんですか」



読みは、当たったようだ。


「こんなところで会うとはな」


大人の余裕と、煙草の匂い。

落ち着いたハスキーな声と挑戦的な顔。


「なんだ。追ってきたのか」

「一般人かと思ったので」

「惜しいことした。助けてもらえば良かったか」


思ってもないことを。


「私を探しにきたんですか」

「あー、まぁな」


紫煙を揺らしながら、男は目線を逸らす。


「見合い相手がどんなやつか、見てみたいだろ」


あ、ロリコンだ。

本物のロリコンだ。


「ま、というのは冗談で」


小田、やっぱりお前の言う通りだった。

ロリコンだ。ただのロリコンだったぞ。


「見合いは建前でだな、律、協力しねぇか」

「ロリコンは無理です!!!!!」

「……」

「…………」

「えっ」