狂気のお姫様

「なんでそんな挙動不審なの」

「虐められた」

「誰に」

「銀髪」

「理解」


命からがら銀髪から逃げ、やっとこさ一日を終えた私のHPは残り0.1しかないと思う。

実際体力は使ってないのに、変に焦ってしまって精神をごっそりと削ぎ落とされてしまうあの顔面はいかがなものなのか。


「はぁ」

「なんか食うか」

「大賛成」


女子高生の放課後は、甘いものに限る。

ということで、いつものようにカフェ探索に繰り出すが、



「俺らは東堂組だぞ?なめてんのか??」


聞き馴染んだ名前が耳をかすめ、足が止まる。


「東堂?」

「あー、甘いものはパスだな」

「あれ知り合いか…?」

「いや」


路地の入口でガラの悪い男が2人、一般人に絡んでいる姿が見える。

たまにいるんだよな。東堂の名を使って好き放題する頭の悪い奴ら。


「行くのか?」

「見て見ぬふりはできないよね…」


私は割と家大好きっ子なので、東堂の名が汚れるような出来事は見過ごせないのだ。


「小田、今日パーカー持ってきてたでしょ」

「あー、黒の」

「今持ってる?」

「うん。貸そうか」

「制服で暴れらんないからな」

「体操服なくしたぶんの代わりで持ってきたやつだから汚してもいいよ」

「どうやったら体操服をなくすかだけ知りたい」


小田から黒いパーカーを貸してもらい、制服の上から着る。

これでどこの学校かは分からないだろう。


「先に帰ってて」

「言われなくても」

「すまんな」

「頑張れよ〜」


小田の、こういう飲み込みの早いところは割と気に入っている。いや、どうせ自分が関わりたくないっていうだけなんだろうけど、友達としてはとても楽だ。


パーカーのフードを被り、路地に入っていく3人を追う。



「金出せっつってんだろ??」

「さっきからわけわかんねぇこと言ってねぇでよ!」


チンピラ2人の声が聞こえる。

東堂がカツアゲなんて小さいことするはずがないだろ。ふざけるなよ。

ムカッとしながら左手で顔を隠す。両手が使えないのは少々不便だが、身バレするよりはマシだろう。


あの絡まれてる一般人の人、怪我がないといいけど……。


と思ったのだが、それは杞憂だったようだ。


「はぁ、東堂の娘を見に来たら、東堂を名乗る偽物と出会うとはな」

「はぁ?」





絡まれているはずの男から発せられた言葉に、ピタッと足を止め、気配を消した。