狂気のお姫様

憂鬱な気持ちのまま授業を受け、憂鬱な気持ちのままお昼ご飯を食べ、憂鬱な気持ちのまままた授業を受けていると、だんだん腹が立ってきたので、珍しく授業をサボることにした。

……のだが。






「どういうこと?」

えー……。なんで怒ってんのー……。

「りーつ。よそ見するな」

「んぶっ」


むにょっと頬を片手で掴まれ、そのまま強制的に正面を向かされる。

ええそうですとも。銀髪ですとも。しかもなんか機嫌が悪い銀髪ですとも。

どこでサボろうか、と散歩していたら珍しく愁さんから『今なにしてんの』と連絡が来たのだ。普通に今の時間は授業中なのに『なにしてんの』ってどういうこと?この人もしかして授業が何時から何時までって知らないのか?と思いながらも、私もたまたまサボり中だったので『サボり中です』と返したのだが、今しがた彼に見つかって連行されてしまった。屋上に。


「どういうこと、と言われましても……」

「なんで見合いなんて話が出るわけ」

「私が聞きたいです」

「聞いてきて」

「見合い相手にですか」

「ついでに殺ってきて」

「物騒」


サラッとした顔で何言ってるんだこの人は。

愁さんは私の頬から手を離し、そのまま頬杖をつく。



「ていうか、なんで知ってるんですか」

「陽介が言い散らかしてた」

「『言い散らかしてた』……?」


高校でも習わないようなヤバい動詞すぎて復唱してしまったじゃないか。

ていうか陽ちゃんよ。何言ってくれてんだ。


「じゃあ天のみんな知ってるってことですか」

「鳴は発狂してた」

「きも」


おっと本音が。

しかも想像がつくから尚更きもい。



「で、行くの?」

「ですね。一応」

「ふぅん」


ふぅんて。

爽やかな風とは裏腹に、何考えてるのかまったく分からない目の前の男。後ろには壁。言わずもがな逃げ道はない。


「どこのどいつ。組関係でしょ」


あ、そこはご存知なのね。

そりゃそうか、陽ちゃんと仲良しだもんね。


「えーと、成瀬組?っていう組の、若頭らしいです」

「は?」


え……。


「成瀬?」


こ、怖い。

信じられないほど眉間に皺がより、一瞬で殺意を放つ愁さんに、ひゅっと喉が鳴るのが分かった。

なになになんなの。


「知り合い、なんですか?」

「……いや?」

「絶対知り合いじゃないですか」


よくその表情で否定できたものだな。