狂気のお姫様

「まじで?」

「まじで」


最近前髪を伸ばしているらしい小田は、目をかっぴらいたまま静止している。

ちなみにだが、私も昨日その反応だった。


「は?どういうこと?」

「ってそのままそっくりジローさんに聞いたら、とりあえず会うだけだって」

「でも縁談ってことは、あっちが結婚を望んでるってことでしょ?え?東堂結婚すんの?まじで?姐やんになるってこと?」

「姐やんは意味分かんないけど、結婚するにしても今すぐじゃないよ。将来的にって意味でしょ。ていうかあっちが何考えてんのか分かんない。だって私、まだ高校生だよ」

「めっちゃロリコンとか」

「うわ」

「想像しただけで……」

「きもいな」


想像して机に項垂れる。顔も知らない男とお見合い……か。

私はジローさんの娘じゃないから、そんなに力を持ってるわけでもないのだが、それでも組長の姪というブランドはある。そこを狙ってるだけなんじゃないかとも思うんだけどな……。成瀬組の若頭なんて会ったこともないのに。


「相手、何歳なの」

「25だって」

「何個違うの。9?」

「うん。大人になってからの9歳差ならまだしも、片っぽが高校生の9歳差はやばくない」

「やばい」

「見合いで大暴れして帰ろうか」

「それは見たい」

「のるな。止めろ。もう小田代わりに行ってよ」

「肩にドギツイ桜の刺青入れて決めゼリフ言ってもいいなら行く」

「ドラマの見すぎ」


ちなみにだが、私に縁談の話があったことは陽ちゃんも知っている。今日の朝5時に「律!!お前結婚すんのか!!?」と意味不明なことを言いながら起こしてきやがったのでとりあえず蹴っておいた。


「お家騒動に巻き込まれるのが一番めんどくさい」

「私には縁のない話だわ」

「ジローさんが出来る男なばっかりに……他のとこに目をつけられんだよ……。もっと出来ない男だったら私が売られることもなかったのに……」

「そのおじさんって縁談の話乗り気なの?」

「なわけ。めっちゃ怒ってた」

「笑った。だけど会うんだ」

「そりゃ自分とこに好意的な組だし割と大きいとこだからね。無下にはできない」

「ふぅん。難しいね」

「だけど私はほら、ジローさんの娘じゃないでしょ。それに縁談はあっちが言い出したこと。私が何かしら粗相をしようが、私に責任は降りてこない。ということはよ」

「大暴れできると」

「ザッツライト」

「それおじさんに怒られるんじゃ」

「殺されるわな」


やっぱり大暴れはなしか……。


「いつ会うの?」

「再来週」

「結婚してもパフェ食いに行こうな」

「やめろ」


結婚なんて、将来考えればいいや、と思っていたので今その話を出されてもどう考えていいのか分からない。せめて高校を卒業してから、いや、20歳をこえてからにしてほしい。

この話のせいで今家は大混乱。さっちゃんなんて鬼の形相で怒ってた。そこは普通に嬉しい。好き。

ただ、私の両親に知られるとまた厄介なので、とりあえずは彼らの耳に入れないようにはしているらしい。彼らの耳に入る前に決着をつける魂胆か。ジローさんらしい。