狂気のお姫様


「なっ……!!やめっ…!!!!!」

私はズルズルと鹿島杏奈を引きずると、窓の方へと近づく。

「律…?」

遠くで陽ちゃんの声が聞こえるが、文句を言うのはあとにしてくれ。

鹿島杏奈はもごもごと何か言葉を発そうとするが、私がそれを許さない。

後悔とか、謝罪の気持ちとか、そういうのはどうでもいいの。

ただ、私がすっきりすればいいだけだから。



窓枠に鹿島杏奈の頭を追いやると、驚愕の目でこちらを見てくる、が、そのまさかだよ。残念ながら。


「い…や…め……!」

「なんて言ってるか分かんない」


ただボコボコにするのも面白くないからね。


「大丈夫。死にゃしないよ」


人殺しになりたいわけじゃないので。

周りからは勿論悲鳴が聞こえる、が、誰も止めようとはしない。



「じゃ、未知の世界へいってらっしゃーい」


恐怖と恥辱と、いろんな感情が混じって涙でぐちゃぐちゃな鹿島杏奈の体を思いっきり窓の外へ投げ出すと、

「きゃぁぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!!!!」

一瞬で視界から消えた。


そう。

落とした。

窓から。






「律お前!」

すかさず陽ちゃんが窓の外に顔を出す。

が、



「大丈夫だってば」

すぐに私の手元を見てため息をついた。

「いつの間に…」

「落とす直前ぐらい」


私の手には、先程体育館倉庫から拝借してきた大縄跳びの縄。

つまりだ。

鹿島杏奈は2階から宙吊り状態、ということだ。

まさかほんとに落とすわけないじゃん。落とす直前に左足に縄を引っ掛けたのだ。

チラリと鹿島杏奈を見ると、宙吊りだから勿論あられもない姿になっているのだが、あまりの恐怖に失神しているようだ。

「これでもう私に喧嘩は売らないでしょ」

「絶対にな…」

窓枠に縄をくくりつける。

あぁでも、古そうな縄だったから切れるかもしれないけど。

切れたとしてもこの距離じゃ死なないからオールオッケーだ。


「オッケーじゃねぇよ」

「頭の中読むな」

変態め。




あぁでも。

まだオッケーじゃないか。




「仲間がいたっけ」



ぐりんっ、と先程の取り巻きたちに顔を向けると、取り巻きの女たちは悲鳴をあげながら後ずさる。


「人のせいにする暇があったら、先に謝れば良かったのに」

まだ謝るならば、許してあげても良かったのに。

「ごめんなさい!!!知らなかったの!!!!」

今更遅いし、言い訳も聞きたくはない。



喧嘩を売るのが、悪いんだよ?