狂気のお姫様

「あんたなんか!!!!!」

鹿島杏奈はうつ伏せのままこちらを睨む。

「あんたが悪いのよ!!!」


それは心外だな。


「私が何をしたって?」

ジタバタと藻掻く様が滑稽で、思わず鼻で笑ってしまう。


「あんたが!!!天に近づくから!!私の席なのに!!!あんたが!!!」

なんて理不尽な答えなのだろうか。

「せっかく牽制してやったのに!!どいつもこいつも使えない!!!くそ!!!」


もう今更取り繕っても遅いと思ったのだろう、本性が丸見えだよ。

少なからずもファンはいたのに、周りの人たちは絶句。

あの可愛い鹿島杏奈が踏みつけられながら暴言を吐いているなんて、誰が想像しただろう。


そして牽制…とは、1番最初のあの事件のことだろうね。私の根の歯もない噂を女たちに流して、大人しくさせようとしたんだろう。

しかしだ。


「あぁ、牽制ってあの彼氏寝とったとか意味分からないこと言ってたあの女たちのこと?」

そうか、あんたは知らないんだったね。


「あの女たちは私が病院送りにしてやったけど」

「…は?」

馬鹿だなぁ。何も知らないのは。

「知らなかったの?知らないよね。もしかしてずっと、私がいじめられてると思ってた?」

「だって…みんなが、あんたを…」

「全員弱すぎて面白くなかった」


笑っていた顔を引っ込め、真顔に戻ると、鹿島杏奈は小さく悲鳴をあげる。


あぁ、可哀想に。

やっと誰に喧嘩を売ってたのかが分かってきたのか。


「そもそも、誰かが誰かに近づくのが嫌だから嫌がらせする、っていうのが理解し難い」

子供かって。

「あぁでも分かってるから」

「…は…?」

なぜあんたが私に喧嘩を売ってきたか。




「私が、あんたより、可愛いから」


できるだけ顔を近づけ、鹿島杏奈にだけ聞こえるように、ハッキリとゆっくりと、そう伝えると、

「あんた………!!!!」

鹿島杏奈は顔を真っ赤にして目を吊り上げる。


足の力を緩めると、すかさず抜け出してまた掴みかかろうとする、が、


「うるさい」

「ウグッ」

単細胞の考えが読めない私ではない。


鹿島杏奈の腹を蹴りあげると、鈍い声をあげ、数メートル吹っ飛んだ。



「ゲホッゲホッ…!!」

「やられた分はやり返さないと、ね」

自分の中の狂気は、既に心を埋めつくしていて、またにんまりと笑うと、鹿島杏奈は嘔吐きながらガタガタと震える。


「ほら、今更売った喧嘩を買い戻すとか言わないでよ。さっきまでに威勢はどこにいったの」

「やめ…ングッ!!!」

泣き言なんか、許さないから。

言葉を遮るように、片手で鹿島杏奈の顔を掴むと、ギリギリと手に力を込める。

「いだい!!!いだいいだい!!」

女の子だからね。さっきの私の蹴りで相当体はボロボロ。正直動けないくらい痛いだろう。

だからやり甲斐がないんだよね。