狂気のお姫様


素早く身を翻し、鹿島杏奈の足をかけると、うつ伏せに倒れ込んだ彼女の首元を右足で固定する。


「いだい!!やめて!!誰か!!」

「まだ気づかないの?あんたの味方は、もうどこにもいないの」

「私じゃない!私じゃない!!」

「うるさいなー」


足に力を入れると「うぐっ…」と鈍い声を出し、苦しそうに咳き込む。「殺すなよー」と向こうの方から自称兄の声が聞こえるが、簡単に殺すわけないだろ。


「ちなみに、仙道という男とラブホテルに入る写真もあるけど、見たい人いるー?」

一応携帯の画面を周りに向けるが、そんなことしなくても鹿島杏奈の所業はここにいる全員が理解しただろう。

「嘘でしょ…」
「まさか鹿島さんがこんな」
「西城のスパイだ!!」
「今までの全部嘘だったんだ!!」

積み上げてきたものが、崩れ落ちるのはいつだって一瞬。



何故こんな音源があるのかって?

私の写真が出会い系サイトに投稿されたあの事件を覚えているだろうか。

鹿島杏奈は別の携帯を使って特定されないように上手く逃げた、が、逆を言えば、あの携帯を使って良からぬことを企んでいるということだ。それはこれからも。

高校生だ。未成年だし、携帯を取っかえ引っ変え契約することもできないだろうし、そんな危機感があるとも思えない。ということで、ハッキングした時にきちんと追跡アプリを入れておいた。

イチかバチかだったのだが、こんなに綺麗に撮れているとは。

昨日空郭と殺り合った夜、そういえば、と思って追跡アプリを確認してみたらこれだ。すぐに仙道の携帯にダウンロードした。私の携帯より、仙道の携帯から音源が流れた方が信憑性があるだろう。

こんな証拠なくとも、ぼこぼこに殺ってやろうとは思っていたのだが、こんな清々しい証拠があるのなら出さないわけにいかないだろう。

ちなみにラブホテルの写真は、鹿島と仙道のメッセージのやり取りから、近くの防犯カメラを虱潰しに片っ端からハッキングし、中身を少し拝借した。疲れた。

この床に倒れ…いや、屍と化している男たちを殺ったあと、蘭に連絡し、私の鞄から仙道の携帯を持ってくるように言っておいたのだが、蘭ちゃんさすが。タイミングばっちり。

「俺めっちゃ従者みたいじゃなかった?」とキラキラした顔で小田と話しているが、そこ、無駄口叩くな。

さて。

「はい、お前はもう、終わり」