何かを引きずるような音と、それに伴って大きくなる悲鳴、血の匂い。
なぜこうなった。どこで育て方を間違ったんだろう。
自分が育てたわけでもないのに、昔の可愛かった女の子が走馬灯のように次から次へと頭の中を駆け回る。
昔はあんなに可愛かったのに…、いや、昔からほぼあれだったか。あいつが可愛かったのなんてせいぜい1歳までだ。2歳から悪魔だ。
「陽介、遠い目してんぞ」
パコッと鳴に頭を叩かれてハッと現実に戻る。
「走馬灯見てたわ」
「死ぬのか」
そうかもしれない。というか、ジローさんに殺されるかもしれない。
悲鳴がすぐそこまで近づいてきて、やっとその音の理由を理解した。
「おっとー…」
これはさすがに予想外。いや、こいつの行動を予想するほうが難しい。
「あー、やっと見つけた」
ゾクッ
返り血のついた顔で笑う律は、すごく綺麗なのに、死神に鎌を突きつけられている気分になる。
「え、何、なんで」
狼狽えているのは、周りのオーディエンスたちと鹿島杏奈。
「これ、返すね」
律の両手には、生きているのかさえ分からない血だらけの男が2人。ずっと引きずってきたのだろう、廊下に血の線が2本ついている。
「掃除、大変だぁ」
そう言いながら鹿島杏奈の方に屍を投げる律は、「あー、重かったー」と肩をバキバキと鳴らす。
「え、どういう、こと」
「あー、まさか私がこんな雑魚に殺られるとでも思った?」
普通は殺られると思うだろうな。
鹿島杏奈の足元に転がっている男たち、ほう、1人は意識があるようだ。
「何言ってるの、怖いんだけど。こんな男の人たち知らないんだけど」
理解できない恐怖からか、声が震えている鹿島杏奈。
「…ざけんな」
声をあげたのは、意識がまだある血だらけの男。
「ご、ごんなに強いなんて聞いでねぇぞ杏奈ぢゃん!!!」
男の言葉に、鹿島杏奈の顔がサッと青ざめ、周りがザワつく。
「何言ってるの、知らない!」
「ふざげんなよ!!ごの女2人を殺れば金をくれるって言っだのは杏奈ぢゃんだろ!!!」
茶番だ。
口封じをするはずが、下僕に全てを暴露される滑稽な姫。
「ふはっ」
場違いな笑い声に、周りはシンと静まり返る。
「ちゃんと自分の犬は躾けとかないと」
「……あんた…っ」
「ほらほら本性出ちゃってるよ」
ほんと、人を挑発するのがうまい奴だ。
今から、地獄が始まるのだろう。
「律ー、頑張れー」
4人も小田も既にオーディエンス側についていて、愁なんて小声で応援している。やめろ。夕も鳴も手を振るな。
「決勝戦か」
蓮は通常運転なので無視だ。あぁ、まともな奴なんてどこにもいないんだ。
誰か妹を止めてくれ。
【side end 如月 陽介】
