「は?なんで小田そんなとこで転がってんの」
「お前が今蹴っ飛ばした男が私の頭を掴んでたからかな」
まぁいいさ。許してやろう。汚れたけど。許してやろうそこは。
「小田のその不幸体質どうにかならないわけ」
「お前が言う?」
多分大半はお前のせいだぞ、と思うが、そのままの男を鉄パイプで殴り飛ばす東堂にそれは言えない。
「は、は?なんだお前」
お待ちかねの東堂の登場なのに、こんな破天荒女だとは知らなかったのだろう、狼狽する男たちはなんとも滑稽だ。
「小田、戻っといて」
鉄パイプをひゅんひゅんと振り回す東堂に、あぁここは血の海と化すんだろうな、と思う。南無三。
私もわざわざそんなグロい光景は見たくないので退散しようと思っていたため、万々歳だったりするが。
「いやいや、そんな許可してないから」
「許可ぁ?なんであんたの許可が必要なわけ」
「はぁ?お前なめグハッ!!」
「うるさいってば」
まじ怖いってば。
「と、東堂」
「もうお昼始まるし、とりあえず陽ちゃんたち見つけて一緒にいて」
それは安全なのだろうか、逆に。
「う、うん」
が、従うしかないので、あとは東堂に任せて倉庫を出る。
正直、拉致られるなんてこうも連続で起きることなんてないし、そもそもこんなふうに喧嘩に巻き込まれることもなかった。環境の変化についていけなくて、膝が笑っている。
「如月さん…」
鹿島杏奈の手がどこまで回っているのかが分からない以上、信じられるのはあの5人しかいない。
昼を知らせるチャイムが聞こえてきて、同時に、震える足を叱咤する。
後ろからは男たちの断末魔が聞こえてきて、逆に怖い。
校舎に入ると、教室から出てきた生徒で廊下はいっぱいで、薄汚れた格好で1人だけ焦っている私は、浮いているみたいだ。
誰かはいるはず。
そう願って2階のロビーへ向かう。
ぐしゃぐしゃになっている髪の毛を手櫛で直し、派手な頭たちの中、一際目立つ頭が目に入った。
「羽賀さん…」
あの人のオーラなのか、それとも周りが距離を置いているからか、どうしてあの人はこうも目立つのだろうか。
人混みを掻き分けていくと、珍しく他の4人も一緒のようだ。
「あれ、小田ちゃんじゃね?」
佐々木さんが私に気づくと、私も彼らの横にいる存在に気づく。
「あれぇ?どうしたの?」
ハニーピンクのふわふわの髪の毛と、顔は笑っているのに何故か恐怖を感じる目。
足が止まる。
私たちを襲わせた張本人だ。
「ん?」
小首を傾げる鹿島杏奈は、客観的に見ると、守りたくなる女の子そのもの。
彼らと何を、話していたのだろうか。
「小田、どうした」
長谷川さんが声を掛けてくれるが、分からない。
私が今話をして、皆は信じてくれるだろうか。
思いがけず襲われたことで、パニック状態で、何故か悪い方向にしか考えが向かない。
私ってこんなに心が弱かったっけ。
どうしよう。
いろんな人が行き交う大きいロビーで、自分だけが取り残されたような感覚に陥っていく。
「落ち着け」
一言だけ。
一番怖いと思っていた銀髪の声がスッと頭に入ってきて、
「あんた、もう終わりだよ」
さっきまで感じていた感覚がスッと消え、ハニーピンクの髪の女に言い放った。
【side end 小田 奏見】
