狂気のお姫様

【side 小田 奏見】


「本当に来るのかよ。東堂律ちゃん」

信じられないほどの不幸体質に、驚き通り過ぎて恐怖を感じる今日この頃、東堂、まじで早く助けに来て。


「もう始めててもいいんじゃね?」

「確かに。女2人ボロボロにするだけで1人5万なんて、儲けもんだわ」


埃っぽい倉庫の床に、拘束もされずただただ座らされているのだが、恐怖のせいで微動だにできないでいる無能な私 is 小田。


あぁ、私たちの価値は5万円なのか…意外と高いな…なんて頭の隅で思うが、待てよ、何割が東堂で何割が私なんだろう。まさか4万9千円が東堂でたったの1000円が私なんてこと…有り得る。たまに奮発して食べるデラックスパフェ1100円よりも安いじゃないか。死のう。


「先に始めますか〜?小田さーん」

「…!」


急に顔を覗き込まれてビクリと肩が上がる。

「怯えちゃって可哀想〜」

だったら解放してほしい。

頭の中ではこいつらをボッコボコにしているのに、私の筋肉量では残念ながら不可能だ。

だから私は信じて待つしかない。信じる先があの悪魔……いや閻魔大王であるということは分かっているが、私は東堂教の信者になるしかないのだ。


「痛っ」

いきなり頭を掴まれる。

「小田さん髪の毛サラサラだね〜」

褒められても全然嬉しくない。くそ…、なんでこんな目に合うんだ。

恐怖と痛みでうっすら涙が浮かぶ。

東堂早く。パフェおごるから早く来て。

ヒーローを待つヒロインの気持ちが分かるが、残念ながら今から来るヒーローは女。いや、男かあれは。

ブチブチと髪の毛が何本か抜けるのが分かる。私の可愛い髪の毛ちゃんたち。ごめんな。

もうダメだ。

今目の前の男が振り翳しているこの拳一発は受けなければならなさそうだ。



が、


ガラッ

「授業サボらせやがって!!死ねこの野郎!!!」

ドガッ!!


勢いよく倉庫の扉が開いた音と、聞きなれた声が耳に入ったと思ったら、いきなり視界が反転した。


「めっためたのボッコボコにしてやる」

あぁこの声は。

「東堂〜〜〜!!!!」

私のヒーローは、やっぱりあんただよ。