狂気のお姫様

「あれ、なーに話してんのかなぁ」

佐々木夕は、ハンドルに頬杖をつきながら足をブラブラさせる。

「さぁ…」

「あれ、小田ちゃんの彼氏だよね」

「です」

「ていうかなんで彼氏?」


あぁそうか。そういえばここに至るまでの経緯を言ってなかったな。


「あの彼氏、鹿島杏奈に騙されたんですよ」

「は?またあの女?」

「あー、やっぱりか」

驚く佐々木夕と裏腹に、何故か納得いったように頷く鳴さん。


「黒幕がいるのかと思ったが、そいつか」

同じように、陽ちゃんも頷く。


「騙されたって?」

「あぁ、詳しくはまだ分からないんですけど、あの男が小田の彼氏だと気づいて鹿島杏奈が近づいたっぽいんですよ」

「ふぅん。で、あの女、空郭にも近づいてたわけ?」

「多分ですけどね。小田の彼氏に空郭に入れるかもしれないってことを持ちかけて、私たちを誘い込んだみたいです」

「えー、それ最低な彼氏じゃない?」

「まぁ、バカだとは思いますけど。悪気があるような人じゃないと思うんですよね」

じゃないと、ここまで来ないだろう。

「私たちが連れて行かれそうになったとき、助けようとはしてたんで」

ま、弱かったけどな。

「ここまで来る勇気は賞賛するけどなー」

鳴さんの声に頷く。


「鹿島杏奈、俺らも潰そうとしたわけ?」

また佐々木夕が問いかけてくる。

が、それは違う。

「いや、こいつらが天に勝つとは思ってないでしょ」

「?」

「あの女の敵は私ですからね。私を潰して、そのあと天が空郭を潰せば万々歳。証拠もまぁ、残らないでしょうし」

あの女は、私のことを相当軽く見ているらしいし。

「なーんか、利用されたみたいで腹が立つな」

そう思うのも無理はない。

頭が相当キレる、というわけでもないが、人を扱うのがうまいのだろう。実際、あの取り巻きたちの中にいると頭が良く見えてしまうし。




「で?」

鳴さんの後ろから、銀髪がめんどくさそうな顔で顔を出す。

「殺るんでしょ?律」

「物騒な」

「殺らないの?」

「殺りますよ」

殺るに決まってるじゃないか。

私は相当頭にきてる。


「殺すなよ」

陽ちゃん、何回も言うけど私、人殺したことないからね。

あぁ、明日が楽しみだね。



「で、蓮ちゃんさっきから一向に喋んないけど」

佐々木夕の言葉に、自然と長谷川蓮に目がいく。

「…」



う、うわぁ。すごい形相で睨んでるよ。小田の彼氏を。こっわ。

「燃えてるね」

「燃えてますね」

いや、こんなに自分の感情を惜しげも無く出す人もなかなかいないと思うんだけど。

「てか蓮のそれっていつからなの」

鳴さんが呆れた顔で長谷川蓮を見る。

あら、みんな知ってるのかと思ってたけど、意外と知らなかったのか。まぁそういう話が皆無の5人だもんな。


「気づいたらだよ。蓮ちゃんは今愛の戦士だから」

ダッサ。

危うく口に出すところだった。ダッサ。


「え、だっさ」

言っちゃったよこの金髪!!

「蓮ちゃん!クソ鳴が悪口言った!!」

「おぅ」

「おぅ…じゃないよ!いつまで見てんの!瞬きして!ほら!」

愛の戦士だね…。