狂気のお姫様

【side 小田 奏見】


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

もう、何が怖いって全部怖い。

あの男たちも怖いし、この場所も怖いし、東堂も怖い。まじ怖い。

東堂は絶対悪魔だ。悪魔の子だ。いや、もはや親玉だ。

今まで東堂の所業を本人から聞いてはいたが、実際見るとなると訳が違う。地獄絵図だった。

あんな動き、アクション映画でも見たことない。家が本職っていうのは知ってたけど、それだけであんなに強くなるものなのか。

いや、強いというより、残虐性も秘めていた。

つまり、あいつは『まじで悪魔』ということだ。

この部屋の真ん中で異様な存在感を放っている血まみれの角材なんて、もはや勝手に動きそうだし、ホラーでしかない。



「…はぁ……」

そしてだ。

それより何より、


「小田、無事か」


今目の前でヤンキー座りをしながら顔を覗き込んでくる長谷川さんが一番怖い。


東堂に言われた通り、部屋の隅っこで縮こまってたせいで、左右も後ろも逃げ場がない上に、目の前には長谷川さん。なんだこれ。

「小田、端っこが好きなのか」

こいつはまじでなんなんだ。


「…何か、御用ですか」

もう、何を答えれば正解なのかも分からない。

「助けに来たぞ」

「東堂は…」

「あいつは鬼だ」

それは間違いない。

「長谷川さん、下行かなくていいんですか」

「?」

『?』じゃねぇよ。

「佐々木さんあたり怒ってそうなんですけど」

「俺も思う」

じゃあ行けよ。

「小田のところに行かなきゃいけねぇ気がした」

何故こんなに私にかまうのかも分からないし、そもそも脳みそがぶっ飛んでいるので、思考回路を理解できるとも思わないが、本当に通常運転すぎて引く。



「小田、大丈夫か」

早くどこかに行ってほしい。

「大丈夫です」

もうちょっと一人にしてほしい。

「ほんとか」

色々考えたいことだってあるし。

「ほんとです」

頭の整理がまだついてないし。





「小田、大丈夫だぞ」



大丈夫なのに。

大丈夫なはずなのに。

もう本当に、どこかに行ってほしいのに。

「…うぅーーー……」



やっぱり、大丈夫じゃないみたいだ。