狂気のお姫様

さすがにあの黒い奴が抜け、4人でこの人数を相手にするのは骨が折れるかと思い下に降りてみたものの、別にそうでもなさそうだ。

陽ちゃんの強さは知ってたけど、やっぱり他の3人も桁違いに強い。

確実に敵を仕留めていっているし、無駄な動きもない。佐々木夕以外は。

「え!釘バットとかはじめて見たわ俺!くれよ!!」

喧嘩中なんだよな、と疑問に思うほど喋り倒しているし、おいこら、人の武器を奪うんじゃない。

「蓮ちゃーーん!釘バットもらったー!蓮ちゃんどこだー!」

うるさいなもう。

そしてお前の相棒は小田んとこだよ。

あんな適当な奴なのに誰一人手が出せないのは、やはり相当実力があるからなのだろう、とは思うが、佐々木夕がトリッキーすぎて相手が引いているせいもあるかもしれない。




そんなことを考えながら壁際に座っていると、

「律」

「うわびっくりした」

愁さんの気配に気づかなかった。

この人いつもいつも気配消して近づいてくるの辞めてほしいんだけど。

ていうか、

「え、あれ大丈夫なんですか」

「んー?知らね」

知らねってあんた。

長谷川さんは奴らに目もくれず小田のもとに行くし、愁さんはサボって話しにくるし、あんたたち本当に自由だな。



愁さんは私の斜め前にしゃがみこみ、膝に肘をつきながら陽ちゃんたちの喧嘩を眺める。

「遅くなった」

「え?」

脈絡のない会話に一瞬首を傾げる。

が、すぐに少し前の私の言葉に対してか、と合点がいく。

「気にしてたんですか?」

「別に」



え、どうしよう。私の言葉を気にしていたのだろうか。珍しく、なんというか、しゅんとしているというか…、人間ぽい(失礼)

なにこれ可愛い。

思わず撫でたくなる衝動に駆られるが、今はそんなことしてる場合じゃない。

この人をあちらに戻さなければ。

「…」

「…」

「…」

「…」

「なにしてんの」

「不可抗力です」

撫でてたわ。

いつの間にか手が出てたわ。

「ほんの出来心だったんですけど、触り心地よくて引っ込みつかなくなりました」

「アホなの」

なんでこんなに奇抜な色してるのにこんなにふわふわなんだろう。謎だ。

愁さんは珍しく項垂れて、なんだか少し照れているみたいだ。可愛い…。


「いつまで撫でてんの」

チッ。タイムアップか。名残惜しいがそろそろやめてやるか。

愁さんの頭から手を離すと、顔を上げた愁さんとはじめて目が合った。

この人、本当に綺麗な顔してるよな…。



呑気にそんなことを思っていると、

「律、これ何」